十六
まゆさんは三年生になった。
三年生になると専門の授業が多くなり,担当教官を決めて,卒論の予備練習としてレポートを作成する義務があった。
おまけに実験系だったこともあり,二人の担当教官は違っていたので,どうしても二人過ごす時間は短くなる。
でも,付き合い始めて一年半が経過していたから,ぼくは不安を感じることはなかった。
それは,ぼくも担当教官の指導で忙しくなったこともあると思う。
専攻が同じで,それも少ない学生数だったので,まゆさんと二人でいなくても,いつもぼくの視界の中にいたことも安心感させる要因だったのかも知れない。
そういえば,バイト先も同じだったから,結局は短くなったとはいえ,それほどでもなかったのかも知れない。
ただ,ぼくは男だからまゆさんを欲しいと思う時があった。
今までは,寮の自室でまゆさんを抱いていたが,学内を離れることが出来なくなり,その余裕がなくってしまった。
そこで,ぼくはまゆさんを大学の最寄りの駅近くにあるラブホに連れて行くことにした。
平日は不可能だったので,専ら土曜日の夜に泊まった。
まゆさんは,寮の友人にどのように話していたのかは知らない。
ぼくとまゆさんの仲は,寮生には周知の事実になっていただろうから,取りたてて言うほどのことでもなかったのだろうか。
当時(70's)は,午後九時からが泊まりの料金になっていたので,多分遅い夕ご飯をどこかで食べてから行っていたと思う。
お金がある時は,毎週行っていたような気がする。
寮と違って,誰にも気がねなくできるのがよかった。
まゆさんは声を出すタイプじゃなかったけれど,気持ちが開放的になっているのか大胆になってくる時があった。
「してあげる」
と,言って,ぼくのものを口に含んで激しく動かすので,
「そんなことをしたらいってしまう」
と,止めたこともあった。
まゆさんの中に入っていくと,そこがきつく締めつけてくるので,ぼくは我慢するのが大変だった。
はっきり言って,まゆさんは,今まで付き合ってきた女性のように上手ではなかったが,そんなことはどうでもよかった。
また,ぼくが淡泊だったのかわからないが,まゆさんと複数回したことはなかった。
それまでの女性も同じで,一度いってしまうと満足してしまって,複数回したことはない。
そんなことよりも,まゆさんと二人で一晩過ごせるというのがうれしかった。
ただ,ぼくには気をつけていることがあった。
それは「妊娠」である。
ぼくは,まゆさんにそれを応じさせる以上,妊娠させて母体を傷つけることだけはすまいと思っていた。
万が一妊娠した時は,まゆさんの両親のところに出向き,何としても結婚を許してもらう考えでいた。
妊娠しないようにするため,ぼくは薬局でゴムを買い,まゆさんを抱く時は必ず装着した。
それがまゆさんに対する敬意であり,愛している者の義務だと思ったからだった。
幸い,結婚するまで妊娠することはなかった。
また,まゆさんの同級生が完全に受け入れてくれていたので,ぼくは時間があれば彼らと遊んでいた。
まゆさんは,そのために二人の時間が少々少なくなっても文句を言ったことはない。
反対に,まゆさんも一人になる時間を欲していたのかも知れないと思う。
お互いの行動範囲がわかっていることが,二人の心を揺らすことなく過ごせたのだろう。
ところが,夏休み前になって,またもやまゆさんに迷惑をかけることをしてしまう。
(ぼくに生涯を捧げてきたまゆさん-17 に続く)
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