医師に「袖の下」は必要か

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あなたは,名医(定義は別にして)に診察やオペなどをして貰うには「袖の下」が要るのではないかと思っていませんか。
確かに,外科的な手術で困難を要する場合,「袖の下」を渡せば何とかしてくれるという期待を持つのは理解できます。

誰しも我が身は可愛いものであり,ましてや命がかかっているとなれば,そうするのもやむを得ないと思います。
しかも,大学病院の教授クラスだと100万円もあるといいます。
だが,こんな高額を渡せる人はそういないでしょう。

これを医療保険制度の側から眺めてみると,教授と雖(いえど)も,可能な治療内容は診療報酬という枠組みで規定されており,他の医師と全く異なる治療は出来ません。

つまり,国民皆保険制度の中では,自己負担3割,残り7割は健康保険組合から医療機関に支払われる仕組みとなっています。
その仕組みの中で,医療(治療)内容の金額(点数という)が決まっており,ある病名にはこの治療というように定められています。

もし,この定め以外の治療を行った場合,審査機関には認めてもらえず,7割は医療機関に支払われません。
かといって,それを患者さんに転嫁することも出来ません。
何故なら,患者さんは医療保険制度について詳細な仕組みを知っているわけではなく,医師にその治療方針を任せているからです。

そうなると,必然的に医療機関には7割の損失が発生します。
昨今の医療機関の経常利益は5%にも満たないのが実情で,その様な事態が発生したら,下手をすると赤字転落してしまいます。
医療機関は,労働集約産業と呼ばれ,医師をはじめとする資格を持った職員の配置基準が決まっており,高度な医療を行うには,多大な人件費を必要とし,それに伴う設備投資も高額になります。

即ち,このような制度的枠組みの中で行われる医療に対し,敢えて「袖の下」を渡したところで,得られる利益は少ないし,医療機関側も一人の医師のために7割の損失に目をつぶるほどの余裕はありません。
勿論,外科などでオペが必要な場合,医師によってその技術の熟練度の違いはあります。

だが,これとて,あるオペをする場合,学会で認められている医師でないと不可能(オペは出来ない)という基準があり,医師によってその技術の差を制度的になくすようになっています。
もし,「敢えて」保険適用外の治療を行ったとすれば,健康保険が適用されず,100%自費で支払う必要があります。

ガンなどの高度先進医療といわれるものは,到底100万円ですむわけがありません。
これは,「自由診療」と呼ばれるものの範疇に入りますが,「自由」という名はついているものの,現行制度の中では全てが可能なわけではないし,又,医療機関にそのような設備があるとは限りません。

そんなことを気に病む前に,健康な生活を心がけた方が,はるかに精神的にもいいと思います。
「病は気から」というではないですか。

繰り返しますが,袖の下を渡したからといって,現行の医療保険制度の下では,あなたに特別な治療を行うことはできません。
その事実を知らず,過大な期待をして袖の下を渡し,結果が芳しくなかったから文句を言っても,医師にはどうすることもできないということを知っておいてください。

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