森友学園問題 4

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昨日(2017.03.09)の大阪府庁の立入検査が不調(中止)に終わりました。
大勢のマスコミの前で自説を展開され,その中でも強調されていたのが,
「我々は,大阪府が「認可妥当」の結論を出したから用地を買収し,建築工事も行った」
という発言です。
この発言に対し,
「不認可となった場合どうするのか」
との質問に対し,
「損害賠償請求する」
と回答しています。

誠に失礼ながら行政手続きの経験のない方々にとっては,文言の意味する違いが分からないと思います。
これは,ワイドショーに出演している何とか新聞解説委員と称する方々も同様です。
どうにもその場の空気に流されてコメントしている節が拭えない感じがします。

専門家と紹介するのであれば,実際に実務を担当した方をゲストに迎え,きちんとした説明を受けるべきです。
そうでないと,素人の視聴者は,それこそ「印象操作」にのせられてしまいます。

さて,上記のやりとりの中で大切なのは,籠池理事長の「認可妥当」という文言です。
では,実際のところはどうなのでしょうか。

瑞穂の國記念小學院の設置については,平成26年12月18日開催の大阪府私立学校審議会12月定例会において継続審議となっていいます(Fig 1)。

Fig.1 学校法人の設立高等学校の設置者変更等について(答申)

文書の末尾に,第4号議案に「瑞穂の國記念小學院の設置の件」とあります。
次に,平成27年1月27日に開催された大阪府私立学校審議会臨時会において,小学校の設置について答申が出ていいます。
それが Fig.2 です。

Fig.2 小学校の設置について(答申)

この中では,「以下の条件を附して認可適当と認める」とあります。
従って,「認可妥当」という表現は誤りで,正確には「認可適当」です。
どちらも大して変わらないじゃないかと思われるかも知れませんが,このような場合,公文書の表現を使用する必要があります。

言葉の厳密な定義に注意を払わないと,大きな誤解を生んでしまう場合もあります。
例えば,籠池理事長の発言をもっと乱暴な表現に変えると,
「我々は,大阪府が「認可した」から土地買収や建築工事を開始した」
とも言えます。
これを聞いた方は,
「大阪府が既に認可したのに,今になって不認可にするのはおかしい」
と理解してしまいます。
では,何が「認可適当」なのでしょうか。
Fig.3 の「私立学校の設置等の認可申請手続に関する要項」を見て頂きたい。

Fig.3 私立学校の設置等の認可申請手続に関する要項

画像が小さくて申し訳ないが,手続きとしては下記のようになると思います。

1.学校設置「計画承認」申請(申請期日:開設年度の前々年度の7月31日)

2.私立学校審議会に諮問

3.設置計画の承認(大阪府)

4.施設及び設備の整備(学校法人)

5.設置等にかかる「認可申請」(申請期日:開設年度の前年度の7月31日まで)

6.認可(大阪府)

このウェブサイトを参考にして流れを整理してみると,

1.平成26年(2014年)12月9日:学校法人からの「学校設置計画承認申請」を受けた大阪府が私立学校審議会に諮問。
2.平成26年(2014年)12月18日:私立学校審議会12月定例会開催。諮問された「瑞穂の國記念小學院の設置の件」が継続審議となる(Fig.1)。
3.平成27年(2015年)1月27日:大阪府私立学校審議会臨時会開催。「条件を附して認可適当」と答申(Fig.2)。
4.平成27年(2015年)12月14日:工事着工予定
となり,5の「認可申請」が昨年7月31日までに提出され,校舎完成後,施設及び設備を申請内容と照らし合わせて確認した上で正式「認可」となります。

私の経験からすれば,通例であれば,遅くとも開設2ヵ月前には建物が完成し,建築の完了検査を受け,その後府の検査後,4月1日開設の認可が下りても,準備期間が最低1ヵ月はあります。
それなのに,工事現場を見ていると,到底4月1日開設には間に合わないとしか思えません。

府にしても,スケジュール的にタイムリミットをいつに設けているのでしょうか。
松井知事の会見で,「14日」,「22日」という言葉が出てきたように思うが,これがリミットなのでしょうか。
私は,開設予定日から逆算して,工事完了後,建物の完了検査予定日(建築基準法),担当課の係の完成検査予定日を予め確認していました。

上記の流れが正しいとすると,大阪府へは「認可申請」の段階で止まっており,まだ最終検査が残っていることになるので,「不認可」もあり得ることになります。

私は,今まで新規開設や事業内容の変更手続きを何度も行ってきましたが,「認可適当」という文言に出会ったことは一度もありません。
私の場合は,申請に対して下りてくるのは全て「許可」でした。
それだけに,「認可適当」という曖昧な言葉に惑わされました。
ここまで書いても,「認可適当」という文言は釈然としません。

次に「損害賠償請求」に対する対抗要件を大阪府は持ち得ているのでしょうか。

1.大阪府は計画内容を「認可適当」と認めただけで,しかも下記のような附帯条件がついている。
(1)小学校建設における工事請負契約の締結状況
(2)寄附金の受け入れ状況
(3)詳細なカリキュラム及び入学志願者の出願状況等,開校にむけた進捗状況を報告すること。
2.上記(1)~(3)を鑑みて,実際に完成した建物内容や財務状況の最終結果を確認した結果不認可とした。
3.即ち,認可基準を満たす義務は事業者にある以上,満たせなかった場合の損失を大阪府に請求することはできない。

まぁ,端的に云えば,失敗した場合の損失は事業者負担ということ。
慎重な係官であれば,
「万が一不認可(不許可)となった場合,それまでの投資や損失は事業者負担」
と釘を刺します。

現に,私も上記のような釘を刺されたことがあり,建物を建築する場合など,何億という多額な投資を先に行うので,相当気を使いました。
実際には,一度不認可になっても今更止めるわけにはいかないので,問題点を手直しして再検査を受けることになります。

ただ,今回の場合,工事請負金額が異なるものを3つ用意して関係機関に提出していたことが,私文書偽造や詐欺罪にあたるとなると,次の再申請までのペナルティがあると思います。
即ち,何ヶ月(何年)間は再申請出来なくなります。
万が一こうなってしまった場合,資金繰りも危うい状態であろうから,相当苦しい状況に追い込まれると思われます。

この記事をほぼ半日費やして書いていたら,新聞の電子版で「認可申請取り下げ」の記事が飛び込んできました。
おそらく,参考(1)の共同通信の記事で,施工業者の社長が「籠池理事長の指示で金額下げた」と配信されて,万事休すとなってしまったのではないかと推測します。
又,昨日の時点で,3つの工事請負契約書の存在の説明がつかないために観念したのかも知れません。

このまま突っ走っていたら,上記のように文書偽造とされて,不認可の結果となった場合,ペナルティを覚悟せねばなりません。
「取り下げ」であれば,大阪府は最終結果を出していないので,認可要件に見合う状況になれば再チャレンジできます。

ただ,元々資金繰りが厳しい状況であったから,詐欺まがいのことをせざるを得なかったのだろうから,工事代金の支払いなどがスムースに出来るかどうか不明です。
又,融資を行った銀行も不良債権となってしまう可能性があります。

では,一旦これを精算する裏技があるのだろうか。
私は,既に土地も法人名義になっているだろうし(所有権移転は2016年6月20日),建物も90%くらいは完成しているので,産廃の処理さえ上手くいくのであれば,別の学校法人にそっくり買い取ってもらう方法がよいのではないかと思います。

私が別の学校法人の理事長だったら,自らの現状の財務状況を鑑みて,関係機関に打診を行い,内諾を得られれば,購入を考えます。
今からでは,開校には約1年を要するかも知れないが,準備期間としは充分です。
そうなれば,大阪府も銀行も施工業者もどこも余計な後始末をしないで済みます。

但し,国としては,学校法人森友学園に交付した補助金や助成金を別法人に再交付可能なのかという問題は残りますが,これも,書類上森友学園に返還させた形にして,別法人が申請して交付することにすれば片がつきます(現金は動かさない)。

私は,ある法人が同一の事業で2回目の補助金申請を行った時,1回目の補助金から事業期間に応じた金額を控除して精算(返還)しなければ補助できないということになり,書類上返還したことにして,実質上2回目の補助金は,精算額との差額とした事例を知っています(2回目の補助金-返還額=残額)。

銀行も債務者の変更手続きだけでいいでしょう。
果たしてこの様なことが可能かどうかは分からないが,何とか丸く収まるのではないか。

(参考)
(1)産経新聞:籠池氏発言詳報(1)
(2)産経新聞:籠池氏発言詳報(2)
(3)産経新聞:籠池氏発言詳報(3)
(4)産経新聞:籠池氏発言詳報(4)
(5)産経新聞:籠池氏発言詳報(5)完
(6)産経新聞:籠池氏止まらない恨み節(認可取り下げ)
(7)産経新聞:「理事長に頼まれた」…建築費の過少記載を業者に依頼 日付は白紙で渡す
(8)朝日新聞:自民・船田氏「特別な力学働いたと…」森友問題に言及
(9)朝日新聞:「口利きない」「再チャレンジする」森友・籠池氏会見
(10)朝日新聞:籠池氏の大阪府議会への参考人招致求める 自民党府議団

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