森友学園問題 3

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籠池理事長もいよいよ追い込まれてきた。
特に,総事業費が提出先によって異なるのは何故かということに焦点が注がれている。
東京新聞によれば,

1.国土交通省:二十三億八千四百六十四万円
2.関西エアポート:約十五億五千万円
3.大阪府:七億五千六百万円

となっており,1,2は補助金申請,3は認可申請で,1,2は補助金額を多く見積もるためであり,3は財務状況が破綻しない金額と思われる。
そこで,徒然なるままに,補助金申請や事業計画作成等の実務を担当してきた者としての見解を記してみたい。

新規事業の場合は,開設後何年間かの事業計画を作成するのだが,審査時にはその経営基盤が安定するか否かを問われる。
従って,どうしても水増しの数字を作って経営の安定を見せかけたい欲望に駆られる(今回のように苦しければ尚更である)。
そもそも実績がないのであるから,ある意味では,いくらでも架空の経営計画書は作成できる。

又,府の担当者も今までこの様な案件はなかった(基準緩和後初めて)だろうから,参考に出来る過去の書類はない。
このような場合,担当者としては,計算の誤りや私学審に対する説明資料の追加くらいしか要求出来ることはないだろう。
いわゆる核心的な部分の査定はしようがない。

教員の人件費率が30%云々という報道もあったが,これで運営が可能なのかと疑問を持っても,「大丈夫です」と言われれば認めざるを得ない。
私学の一人当たりの教員の平均給与の資料を入手しておいて,法人側に学校長を始めとする全教員の支給予定金額の一覧表を提出させ,それに照らし合わせるという手間をとらないと根拠の追求は出来ない。

収支科目の全ての算出根拠を提出させて,数字の信憑性を審査するしかない。
それでも,担当者は現実にその様な実務を行ったことがないから精緻な審査をすることは不可能と思う。

おそらくコンサルが経営計画書も作成したのであろうが,つじつまを合わせることに終始しただけで,到底実際的であるとは考えにくい。
施工業者が「15億円が正しい」と言っているのであれば,その数字に置き換えて計画書を再作成させて,財務状況が安定するかどうかを見ればいいと思われる(今となっては遅いが)。

私も,何回かトップの紹介でコンサルと付き合ったが,「綺麗な」計画書を作成するのはうまい。
しかし,実態を知っている(実際に運営している)人間としては,全く容認できるものではなかったので,最終的にお断りし,全て自分で作成した。

決算書などを参考にしながら自分で作成しないと,現実に担当者との問答は出来ない。
銀行借入の際も,新規開設後の3カ年の計画書を作成して提出した。
都銀は,専門部隊を持っているので,彼等が全国の案件から似たようなものを参考にして,こちらの計画書を査定する。

その時言われたのは,「極めて実際の計画に近い」ということ。当たり前である。
こちらは過去の決算状況に照らした数字しか使っていないので,粉飾することは一切ない。
それでも,今までにない支出(項目)もあり,その様な場合は,過少ではなく,少し大きな数字を入れる。
何故なら,大きな金額を入れても黒字になれば,実際の運営でそれより支出が少なければ,更に黒字額は増える。

森友学園が,建築工事費をここまで圧縮しなければならなかったとすれば,相当資金繰りが苦しいのだろう。

今日の放送でも,「何故相互の連携をとらないのか」と頻りにコメントされていたが,通例は,その様なことはしない。
今ではそうでもないが,30年程前は都道府県レベルでも縦割り行政が徹底されていて,交渉が二つの課に渡る場合,延々と往復さされたのを覚えている。

ある時,私は腹に据えかねて,「合同で話を聞いたもらいたい」と申し入れたことがある。
双方が,「うちはこれをやってもらわないと通せない」と言われたら,今回のようににっちもさっちもいかなくなる。
それ故に,私は合同で話をしたいと申し入れたのである。
落としどころを探すにはこうするしかなかった。幸い,双方で譲り合って頂き,最終的な方向性を見いだすことが出来た。

前にも記したが,法人側としては,縦割り行政の盲点を突いた作戦だったのだろうが,説明のつかない書類を提出しているようでは,作戦が功を奏するはずがない。
籠池理事長が熟知しているとは思えないので,何処からかの入れ知恵であろうが,余りにも無責任である。

石原元知事ではないが,「任せきり」にすると,結局自分は何も分からないのである(その意味では,石原元知事は正直に答弁しているといえる)。
おそらく,法人内でも核となる実務担当者を置いていないのではないかと思う。
少しでも事業運営を担った経験のある者がいれば,いくら外部から入れ知恵されても,その危険性に気づくと思う(尤も,理事長の性格からすれば聞き入れそうにもないが)。

私がコンサルを断ったもう一つの理由は,彼等は最後まで責任を持ってくれないということである。
極論すれば,彼等にとっては,どんな手段を執ろうが認可を受ければいいわけで,実際の運営で苦しくなっても手をさしのべてくれるわけではない。そして,今回のようになった場合,コンサルは影に隠れてしまって一切表に出てこない。

私も,約5年くらい前に,政府系の金融機関からの融資手続きを行ったことがあるが,当時の担当者は,
「昨今は必ずといっていいほど,トップがコンサルを連れてきて,専らコンサルに説明させる。トップに質問しようとしても,コンサルが代わって回答する」
と言われていた。

その方によれば,恐らくトップは任せきりで何も分かったいなのであろうとのこと。
又,その傾向が目立ってきてから,新規開設後事業運営がうまくいかず,債務超過に陥って銀行管理になるところが増えたらしい。
それ以来,その金融機関は,事業計画等をトップ自らが説明を行い,質問にも自らが回答するという方針に変えたようだ。

又,コンサル料も決して安くはない。簡単に1,000万円位の見積は出してくる。
偉そうなことを言うわけではないが,「オレが君達にコンサルしてやるよ」と思ったこともある。

コンサルもピンからキリまである。
明確なことは言えないが,縦割り行政の利用はコンサルの発案ではないかと疑っている。
官僚ではないが,人間は過去の成功体験(前例)を踏襲しようとする傾向がある。それ自体には問題はないけれども,時と場合によるだろう。

籠池理事長の味方をするわけではないが,
「理事長先生,縦割り行政を上手く利用すれば,補助金なんて最高額もらえますよ」
とのせられたのではないか。
ここで,実務に長けた側近がいれば,その危険性を察知し,その方法を聴取したうえで問題点も指摘できたであろう。
思うに,余りにも緻密さに欠けている。

教員の確保についても,断られた教員名を名簿に記載していたと報じられている。
新規開設の場合,新たな人員を採用することになるが,仮に開設が4月1日とした場合,準備期間中(この場合3月)に採用できる者もいれば,開設日から勤務する者や遅れて合流する者もいるだろう。
このような場合は,全て雇用契約書を交わしておいたうえで名簿に記載しないと架空人物とみなされても仕方がない。教員免許状の写しも準備しておく必要がある。

新規の場合,人員の確保に苦労するのが常であるが,私は,開設日の半年前から募集を開始し,採用者とは全て予め雇用契約書を交わした。
それでも,現在の職場から退職を止められてキャンセルになるケースもある。

入学希望者は45名いるようだが,これも流動的ではないか。又,45名では到底運営は困難だろう。

昨日の記事で予想したとおり,大阪府は「不認可」の方向に走り始めている。これに対し,法人側は「損害賠償請求」に言及している。
ここまで批判を浴びれば,大阪府は「不認可」とせざるを得ないだろうと思う。

後は,「損害賠償請求」はどうなるか。
工事業者からの情報も続々出てきているようだが,彼等も工事代金を支払ってもらえない状況になることを危惧しているのだろうし,違反行為のとばっちりを食わないように自己防衛するしかない。

自民党は,籠池理事長の参考人招致を拒否しているが,その理由は何だろう。
話されると具合が悪いことがあるのではないかと勘ぐってしまう。
又,政治家の関与であるが,闇の中で終わるのではないか。しかし,鴻池議員は「誰の楯になった」のだろう。

まだマスコミは察知していないかも知れないが,どうやら自殺者が出た模様である。

(参考)
(1)東京新聞:森友学園 保育園も不正受給か 小学校建設費3通 業者は「15億円」
(2)産経新聞:森友小学校「不認可」へ
(3)朝日新聞:籠池理事長,愛知の推薦入学枠巡り釈明 「書きミス…」
(4)産経新聞:籠池理事長「不認可なら賠償請求も」
(5)国土交通省:サステナブル建築物等先導事業

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