薬を出さない医者はヤブ医者か

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あなたは,朝起きて体調が優れない感じがするので,熱をはかると,体温計は37.5℃を示しています。
念のため,近くの病院に受診することにして,会社には午前中休ませてほしいと連絡します。

病院の外来はとても混雑していて,病院に殆ど縁のない自分としては,これほど患者さんが多いことに驚かされる。
受け付け開始時間が8:30だったので,8:20頃に行くと,ロビーは人でいっぱいでした。

診 察

待つこと約2時間。ようやく診察の順番が回ってきます。
診察室に入り,担当の医師の質問に答える間,熱をはかる。
熱は 37.0 ℃まで下がっていました。
診察の結果,医師は,次の3通り話をしたとします。

1.「風邪かもしれないですね。『お薬』を出しておきますので,今日は家でゆっくり体を休めてください」
2.「風邪かもしれないですね。『お薬』を出しておきますので,今日は家でゆっくり体を休めてください。念のため,血液検査をしておきますから,3日後にその結果を聞きに来てください」
3.「風邪かもしれないですが,喉(のど)も腫れていないし大丈夫でしょう。水分を多めにとって,今日は体を休めてください」

さて,あなただったら上のどれが最も納得できるでしょうか。
おそらく,1か2でしょう。

3については,2時間も待たされて,診察時間はわずか10分くらいで,「薬」もださないとはなんて医者だと思ってしまわないでしょうか。
しかし,全ての結果として,翌日には熱も下がり,体も楽になったとしたらどうでしょうか。
3の医者は「ヤブ医者」といえるのでしょうか。

医師と話をしていると,特に高齢者の方は3の結果を言われると,「あの医者は薬も出さない」と「ヤブ医者」呼ばわりされるようです。

ひどいのは,医療関係のテレビ番組を見ていて,思い当たる節があるので受診したという方。
「どこかしんどいところはあるのですか」
と聞くと,テレビでやっていた内容を話しますが,診察してもその兆候はありません。
「大丈夫ですよ」
と言いますが,疑心暗鬼な様子を見せるので,
「じゃあ,一応薬を出しておきます」
と言うと,安堵の表情を見せます。
医師はどんな薬を出すかというと,せいぜいビタミン剤です(病気じゃないので出しようがない)。

何が言いたいのかというと,私たちは,病院や診療所を受診すると,医者は薬を出してくれるという先入観を持っているということ。
そして,3のように言う医者を評価しない傾向があります。

医療費の観点から見ると・・・

医療費の観点からすると,費用が高い順から2→1→3となります。

国が定めた保険点数というのがあり,それに10円を乗じたものが医療費で,あなたはその合計の3割を支払います。
上述の例で言えば,下記の3つの組み合わせとなります。
(イ)診察料・・・医師の診察にかかる費用
(ロ)投薬料・・・薬代+調剤料(薬剤師が調合する費用)
(ハ)検査料・・・血液検査にかかる費用

1は,(イ)+(ロ),2は,(イ)+(ロ)+(ハ),3は(イ)のみです。
しかも,2は3日後に血液検査の結果を聞きに行かねばならないので,必然的に(イ)の診察料がかかってしまいます。
この場合,2の血液検査は,「○○病の疑い」があるので行っていないことに注意。
業界ではこんな検査をルーチン検査という。

初めて受診した患者さんには,症状に関係なく,全て行う病院もあると聞いています。
ある病院が,CTスキャンを導入して,やたらCT検査が増えたという話もあります。

大抵の医師は医療費(医療保険制度)の仕組みを完全に分かっているわけではありません。
しかし,病院長や事務部門の幹部は違います。
病院といえども,採算はとらねばなりません。
とするならば,必要の有無ではなく,採算の有無の観点から医療を行ってしまう場合を否定できません。

結 論

私たちは,最も儲からない診療をしてくれた3の医師に感謝しなければなりません。
支払う医療費も,2と3を比べると,2=3×4倍くらいの差があるでしょう。

あなたも医療機関を受診なさった時,行われた医療行為(検査等)が本当に必要か否か考えてみられたらいいと思います。

こんなことを書くと,すぐに「医者でもないのに何が分かる」と反論が飛んでくることは予想できます。
しかし,長年医療機関に勤務してきた者として,医師の本音や色んな病院の診療体制が分かってくると,行き過ぎと思えることもあります。

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