日本会議について 1

更新日:

マスコミが触れようとしない「日本会議」。
今売れている本に「日本会議の研究」(著者:菅野完氏)がある。
他にも日本会議を扱った著書があったので Amazon で3冊注文した(本日届いた)。
本当は,それらを全て読了してから書いた方がいいのだろうが,反面,読んでしまうと,どうしても論調が本の内容に引っ張られてしまいがちになる。
又,詳細なことは関連書籍に書かれているので,ここでは,出来るだけ重複しない内容を記してみたい。

私は,「日本会議」の思想的基盤を云々(「でんでん」じゃぁないよ)するつもりはないし,各論を延々と検証するつもりもない。

それよりも,私は下記の2つに非常に興味がある。

1.ここまで大きな潮流に仕立て上げてきたのは誰か(役員に名を連ねる人達でも国会議員でもない)。
2.そのルーツはどこにあるのか。

正直言って,私は,菅野完氏の著書を読み終えて,一種の懐かしさを覚えた。
何故ならば,一つ時代が幕を閉じようとする頃に,私も「遅れてきた青年」としてわずかでもその時代の空気を吸った人間だからである。
それは,多感な青春時代の感傷といっていいかも知れない。

果たして,私にみえたものは,正しいとは言えないまでも,あながち間違ってもいないのだろうか。

先ず,日本会議の公式サイトから引用してみる。

沿革

日本を守る国民会議」と「日本を守る会」とが統合し,平成9年(1997年)5月30日に設立

日本会議が目指すもの

1.美しい国柄を明日の日本へ
2.新しい時代にふさわしい新憲法を
3.国の名誉と国民の命を守る政治を
4.日本の感性をはぐくむ教育の創造を
5.国の安全を高め世界への平和貢献を
6.共生共栄の心でむすぶ世界との友好を

日本会議の活動方針

1.私達は,我が国の正しい進路を求め大切な時局問題に迅速に取り組みます
2.私達は,「国会議員懇談会」とともに誇りある国作りを進めます
3.私達は,全国の津々浦々に国を愛する草の根の国民運動の輪を広げます
・全国47都道府県,3300市町村に拠点を
4.私達は,青少年の健全な育成を願い女性運動や教育運動に取り組みます
・日本女性の会(平成13年9月30日)
5.私達は,誇りある国づくりのため,全国に情報ネットワークを作り上げます
6.私達は,美しい日本の心を伝えるため,さまざまな文化事業に取り組みます

何もおかしなことは書いていない。
敢えて言うならば,日本会議が目指すものの中にある「新しい時代にふさわしい新憲法を」というテーゼである。
説明文では,「わが国の憲法は,占領軍スタッフが1週間で作成して押し付けた特殊な経緯をもつ」と表現されている。
そして,その弊害として,
「すなわち,
(1)自国の防衛を他国に委ねる独立心の喪失,
(2)権利と義務のアンバランス,
(3)家族制度の軽視や
(4)行きすぎた国家と宗教との分離解釈,
などなど。
」と明記されている。

この文言を読んでも,具体的に何が弊害なのか今ひとつ分からないので,同サイトのオピニオンの中段に「新憲法の大綱(平成13年2月11日改訂)」があるので,ここを読んでみると,どのような「新憲法」を志向しているのかが見えてくる。

明らかに,現行憲法と異なるのは,「天皇」についての考え方である。
そこでは,
「二、天 皇
我が国の歴史をふまえ、天皇の地位と権能を明確にする
(1)日本国は立憲君主国である。
天皇は日本国の元首であり、日本国の永続性及び日本国民統合の象徴である。」と明記されている。

「日本国は立憲君主国である」のかどうかの議論もあると思うが,それよりも,「天皇は日本国の元首」であるとの規定である。
では,日本会議の志向する天皇の規定を大日本帝国憲法から探してみよう。

大日本帝国憲法には,
「第4条 天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ此ノ憲法ノ条規ニ依リ之ヲ行フ」
とある。

現代語訳すると,
「第4条 天皇は日本の元首で日本を治める権利を持ち、憲法の決まりに従って日本を治める。」
となり,見事に大日本帝国憲法の規定と符合する。

一方現行憲法では,
「第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。 」
と規定されており,天皇の地位は「主権の存する日本国民の総意」に基づいている。

憲法については,これが最も象徴的である。

さて,日本会議は,「日本を守る国民会議」と「日本を守る会」が統合されて設立されたとある。
ウィキペディアによると,

1.日本を守る会は,1974年(昭和49年)から1997年まで存在した日本の民間団体。
2.日本を守る国民会議は,1978年(昭和53年)7月に結成された「元号法制化実現国民会議」を改組し,1981年(昭和53年)10月に発足。

と説明されている。
両団体の役員や代表委員には,錚々たるメンバーが顔を揃えている。

余り表に出てこないが,日本会議に関連すると思われる団体に「日本青年協議会」がある。会長は,椛島 有三である。同氏は日本会議の事務総長でもある。
同団体の公式サイトから沿革を抜粋してみよう(西暦は筆者)。
少々長いが我慢して目を通して頂きたい。

【昭和41年(1966年)】長崎大学で学生有志が左翼過激派学生と対峙し,学園正常化運動に立ち上がる。
【42年(1967年)】「長崎大学学生協議会」結成。学園正常化運動の波が全国に広がる。
44年(1969年)】「全国学生協議会」結成。
【45年(1970年)】橿原神宮で「日本青年協議会」結成(11月3日)。
機関誌「祖国と青年」創刊。
11月25日,三島由紀夫・森田必勝両烈士,憲法改正を訴え,陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自決(三島事件)。以後,三島氏の行動の真意を明らかにする運動を展開し,毎年慰霊祭を開催。
【49年(1974年)】「日本教育研究所」を設立。
【50年(1975年)】「日本文化研究所」を設立。
昭和天皇御在位五十年奉祝運動を展開(~51年)。
【51年(1976年)】全国各地で「祖国と青年の会」を発足。
政府主催憲法記念式典糾弾大会を自民党本部で開催(5月3日)。
【52年(1977年)】元号法制化地方議会決議運動を開始。全国ヘキャラバン隊を派遣し,四十六都道府県千六百三十二市町村で決議があがる。
【53年(1978年)】武道館で元号法制化実現総決起国民大会が開催される。
【54年(1979年)】元号法成立(6月12日)。
56年(1981年)】「日本を守る国民会議」結成。
保守派としての国民統一戦線が形成され,その事務局を担う。
【57年(1982年)】第一回憲法シンポジウムが開催される。以後毎年5月3日に憲法行事。
【60年(1985年)】昭和天皇御在位六十年奉祝運動を展開(~61年)
【61年(1986年)】高校日本史教科書「新編日本史」が文部省検定に合格。以後、全国で採択運動を展開。
【62年(1987年)】靖國神社で「戦没者追悼中央国民集会」が開催される。以後,毎年開催。
【63年(1988年)】昭和天皇御平癒祈願記帳運動を展開。全国自治体などで約一千万人が記帳。
【平成元年(1989年)】大嘗祭を国家儀礼として行うことを求める運動,天皇陛下御即位奉祝運動を展開(-2年)
【2年(1990年)】現憲法下で初めての即位礼・大嘗祭が、国家儀式として実施される。
【4年(1992年)】日本青年協議会結成二十周年記念大会。新憲法制定運動を推進。
「日本政治経済研究所」を設立。
【5年(1993年)】戦後初めての両陛下沖縄行幸啓に際し、現地で奉迎運動を展開。
日本を守る国民会議が「新憲法の大綱」を発表。
【6年(1994年)】終戦五十年に際し、国会謝罪決議反対五百万署名運動を展開(~7年)。
9年(1997年)日本を守る会」と「日本を守る国民会議」が大同団結し,「日本会議」が結成される。
【11年(1999年)】国旗国歌法成立(8月9日)。
【13年(2001年)】日本青年協議会結成三十周年記念大会。教育基本法改正運動に着手。
「民間憲法臨調」が設立される。
【14年(2002年)】靖國神社に代わる国立追悼施設建設反対運動を展開。国会・官邸へ向けて「請願デモ」が行われる。
【15年(2003年)】「民間教育臨調」が設立される。中教審が「教育基本法の全面改正」を謳った答申を発表。
【17年(2005年)】これまで積み重ねてきた三十五年の青年運動を次代に託し全ての世代の力を結集すべく「日本協議会」を結成。
「皇室典範に関する有識者会議」が、「女系天皇の容認」「長子優先」を柱とする報告書を提出したことを受け,拙速な皇室典範改定に反対する運動を展開。
【18年(2006年)】五十九年ぶりに教育基本法が全面改正される(12月15日)。
【22年(2010年)】東京ビックサイトで夫婦別姓に反対する五千人大会,日本武道館で外国人参政権に反対する一万人大会が開催される。

これは,まごうことなき椛島 有三の履歴書である。いや,椛島 有三そのものと言ってもいいかも知れない。

次回は,この中から注目すべき出来事を取り上げて検証したいと思う。

次回:日本会議について 2
関連記事:天皇が「国家元首」になると国民は幸せになれるのか
(続く)

(参考)
(1)ウィキペディア:日本を守る国民会議
(2)ウィキペディア:日本を守る会
(3)毎日新聞:森友学園 さて今の思いは…「広告塔」の保守系文化人たち
(4)朝日新聞:首相夫人・昭恵氏は「私人」政府が答弁書を閣議決定
(5)産経新聞:国有地売却額非開示訴訟,国側はすでに公表も争う姿勢
(6)産経新聞:大阪府が「森友」を刑事告発検討

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