安倍首相は,国民を信頼できないのか(共謀罪)

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森友学園問題も収束を見ないまま,いよいよ今日(4月6日)から共謀罪の審議が始まる(時事通信)。

メディア(テレビ)は,これまで森友学園問題一色で,共謀罪については一切報じてこなかった。
それほど,安倍政権のメディア管理は徹底している。
特に,ワイドショーなどの生番組に対する介入は度を超しているように感じる(最早「検閲」と言っていいかも知れない)。

そのため,失礼ながら,多忙な毎日を過ごしている方々にとっては,今日本で何が起きているのか分からないのではないかとさえ思う。
私も現役の時は,目の前の仕事に追われ,とても日本という国の情勢まで気が回らなかった。
安倍政権は,一見様々な施策を打ち出しているようにみえるが,それが成功しつつあるとはとても言えない状況だろう。
しかも,新たな施策が次から次へと出されるため,過去の検証すら行われていない。

野党は,烏合の衆に成り下がり,民進党に至っては,かつて一時期政権を担った政党とは思えない状況にある。
選挙の度に安倍政権が勝利するのは,その政策が功を奏しているからではなく,野党が何も出来ていないから,投票率は低迷し,一票を投じるにしても,消極的に安倍政権に期待するしかないのだ。

若い人達は,自分の未来を明るいと捉えられないが故に目先のことに走ってしまう。
いつから日本は若い人達に夢を持たせることをしなくなったのか。
現在ほど,若い人達にとって不幸な時代はないと思う。

閑話休題。

日本で,無差別テロと言っていいのは,地下鉄サリン事件くらいだろう。
戦後吹き荒れた学生運動にしても,所詮セクトの内ゲバがせいぜいで,無差別に起こしているわけではない。
その新左翼も,今は見る影もなく細々と活動しているだけで,とても影響力があるとは思えない。

確かに,先日もロシアでテロがあった。しかし,日本で同様なことが想像できるだろうか。
シリア紛争や IS の問題にしても,私はユーラシアという地続きの大陸が故に起こっている(起こせる)ことだと考えている。
身近には,中国,北朝鮮,韓国も大陸である。

翻って,日本は「島国」である。
周囲を海に囲まれていることは,自然の要塞があるとはいえないだろうか(北朝鮮のミサイルは又別の議論になる)。
隣国と地続きであるということの危険性を考えてみれば,日本は遙かに恵まれている。
日本は,シーレーン防衛をきちんとやれば,外からのテロを未然に防ぐことは,他国に比してずっと容易だろう。

安倍首相は,この法律を成立させなければ,「東京五輪」は開催できないとまで言っている。
では,どのような事態を想定してそんな発言をするのか。それは明確に説明されることはない。

私は,密かに「東京五輪」をネタに何か行動するのだろうと思っていたが,第1弾がこれである。
又,メディアは忘れてしまったかのように「福島」を報道しない。これでは,「東北大震災」は解決してしまったかのように国民には写る。
「避難区域を解除したから元の場所に帰れ」とやる。
安倍政権は,一刻も早く安全宣言を出しておかないと,自分も「アンダー・コントロール」と言った手前,他国の選手から「東京五輪」をボイコットされることを怖れているのだろう。

共謀罪が成立すると,反社会的集団の定義は国家の価値観に左右され,直接的に言えば,時の政権に左右される。
極端かも知れないが,前述の福島に対するデモや改憲に対するデモさえも取り締まりの対象になりかねない。
戦前には治安維持法というのがあった。

この法律の下で弾圧されたのは,小林 多喜二(作家),創価学会(前身は創価教育学会)の創立者である牧ロ 常三郎らがいる。
この二人は,武器を持って政府を転覆しようとしたわけではない。
ただ,その思想・信条が時の政府に合わなかっただけである。
小林 多喜二は特高警察の拷問で死亡し,牧ロ 常三郎は,転向を拒否したために獄死している。

私は,共謀罪は,日本国憲法の下記の3条を無効にしてしまう法律だと思っている。
換言すれば,憲法違反だと思う。

第十九条 思想及び良心の自由は,これを侵してはならない。
第二十条 信教の自由は,何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も,国から特権を受け,又は政治上の権力を行使してはならない。
○2 何人も,宗教上の行為,祝典,儀式又は行事に参加することを強制されない。
○3 国及びその機関は,宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
第二十一条 集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由は,これを保障する。

安倍政権は,改憲によらず,新法の法制化という手段に訴えて,日本国憲法を骨抜きにしようとしているとしか思われない。
もう一つ重大な問題がある。
万が一警察に逮捕された場合,日本では弁護士の立会が認められていない(先進国では日本のみ)。

即ち,警察権力にたった一人で立ち向かわなければならない。
その代わりとしての「取り調べの可視化」であろうが,全てを録画しないのであれば無意味である。
この様に,刑が確定していない段階ですら人権は無視される(テレビでの刑事番組はおかしいと感じて欲しい)。

共謀罪の「証拠」を何に求めるのか(メールや会話などか)は分からないが,曖昧な証拠の元で逮捕される可能性も否定できないとすれば,いきおい警察は「自白」に頼ることになるのではないだろうか。
それこそ,戦前の激烈な取り調べの再来である。

よく考えてみて欲しい。「総理を侮辱」したから民間人を証人喚問してしまう政権である。
それ以上の権力を手にすればどうなるかは推して知るべしではないだろうか。

今や「戦前」を語れる日本人は殆どいない。
政権の中枢にいる人達や「改憲」を旗印にしている人達も同様である。

現代の日本は,「自虐史観」や「東京裁判史観」に苛まれているから,イデオロギー的にしか知らない「戦前」の制度を復活させる方向に走るのは,自分たちの自己満足だけではないのか。模倣と言ってもいいかも知れない。

考えられる反論としては,諸外国もに同様な法律があり,国際的に同じ立場に立てないというのがあるだろう。
かといって,何故国情が異なる日本にもなければいけないのかが分からない。論理に飛躍があるとしか思えない。

野党は,論点を明確に出来るのか。ヒステリックに攻め立てたところで,抑止力にならないこと肝に銘じるべきだ。
メディアに取り上げられ,却って安倍政権にエールを送る形になってしまう。
どうせなら,全国各地で街頭演説をやって,かつての60年安保の時のように世論を喚起するぐらいのことはして欲しいと思う。
野党は,このままでは永遠に国民から支持を受けられず,日本は益々独裁下が進むだろう。

もう,我々はメディアの垂れ流しに依存するのではなく,自発的に情報を取捨選択し,自らの考えを構築しなければ,身を守れない状況に来ているように感じる。

創価学会員と公明党は,創立者である牧ロ 常三郎の墓前にどの様に報告するのだろうか。

(参考)
(1)ウィキペディア:共謀罪
(2)法務省:「組織的な犯罪の共謀罪」に対する御懸念について
(3)法務省:組織的な犯罪の共謀罪に関するQ&A
(4)日弁連:日弁連は共謀罪に反対します
(5)朝日新聞:「共謀罪」法案6日に衆院で審議入り 自公が合意
(6)日本経済新聞:民進,「共謀罪」6日審議入りを拒否 攻防激しく
(7)朝日新聞:共謀罪に関するトピックス
(8)日刊ゲンダイ:小澤俊夫氏が警鐘 「共謀罪で言論の息の根が止められる」
(9)毎日新聞:後半国会最大のヤマ 首相「確実に成立を」
(10)日本ペンクラブ:「共謀罪」に反対する

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