CX-5 の 4WD 性能【機構の解説と走行印象】

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急に冷え込んできたと思っていたら,今朝(2012.12.09)起きると,雪が10cmくらい積もっておりました。
スタッドレス・タイヤは発注済で,ディーラーには2012.12.13に履き替える予定を入れてありました。

しかし,この状況では,明日は夏用タイヤで出勤することになってしまいます。
これは,CX-5 の 4WD 性能が分からないと一人騒いでいた怨念かと一人思案に暮れておりました。
しかも,ディーラーは職場の近くですから,自宅から自力で脱出しないと,今日中にはスタッドレス・タイヤに履き替えられません。

兎に角,ディーラーに電話を入れると,今日はこの雪で予約が一杯とのことでしたが,
「来てくれれば何とかします」
との有り難いお言葉。

『でも,夏用タイヤでどうすんの。万が一ぶつけでもしたら,みんなの笑いものになるよ』と心中穏やかならず。
反面,『丁度 4WD の性能を確かめられる絶好のチャンスじゃん』という誘惑の言葉を囁く悪魔がいます。

しかも,ディーラーの方も何とかしてくれそうだし。
自宅から2Km程のところが下り坂になっていて,そこを無事通り過ぎれば何とかなると考え,意を決して『丁度,4WD の性能も分かるけど,もし滑ったらどうしよう』と半ばちびりながら出発しました。

CX-5 は電子制御 4WD で,以下のような特徴があります。
マニュアルには,
「4WD は,積雪路,砂地,ぬかるみ,急な坂など滑りやすい路面ですぐれた走行性を発揮します」
と書いてあるだけ。
後は,「4WD を過信せず安全運転せよ(当たり前)」とあります。

何これっていう感じ。
これじゃ,特徴もへったくれもないじゃんか。
腹が立つので,例の如く,解説図もろとも MAZDA の該当ページから引用します。

CX-5 の 4WD は,「アクティブトルクコントロールカップリング 4WD」というのだそうです。

ドライバーが気づかないレベルのごくわずかなタイヤの動きや路面状況などをリアルタイムにモニターし,前後輪のエンジントルク配分を 2WD(FF)相当から直結 4WD 状態まで積極的にコントロールします。

具体的には,図1のような概念です(よう分からん)。
図1

それじゃ,どんなシーンで 4WD に制御するのかというと下記のようになります。

図2 前輪がアイスバーンにのった登り坂での発進

前輪のグリップが十分に得られない場合でも,後輪へのエンジントルク配分を直結 4WD 状態まで最適に増加。前輪スリップの発生を抑制し,安定した坂道発進を可能にします。
さらに,この状況ではヒル・ローンチ・アシスト(HLA)が作動し,発進時の安心感をより高めます。

図3 片側前後車輪や対角車輪のスリップする状態の発進・走行

滑りやすい路面と乾いた路面が混在するような状況では,4WD 制御による後輪への最適なトルク配分と,TCS による出力調整・車輪へのブレーキによって,安定した発進・走行を可能にします。

図4 凍結路面の走行

特に滑りやすい凍結路面でも,前輪スリップの発生を抑制し,後輪へのエンジントルク配分を最適に増加させて安定した走行が可能となります。
さらに、DSC&TCS※が作動する状況になると,それらとの協調制御によって 4WD カップリングの締結力を調整し,安全な走行を助けます。
※DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロールシステム:横滑り防止機構)&TCS(トラクション・コントロール・システム)

図5 雨の高速道路走行

滑りやすい濡れた路面では,前輪スリップの発生を抑制し,後輪エンジントルク配分を最適に制御します。
これにより,前輪スリップや不要な後輪エンジントルク配分によるエネルギーの無駄を無くし,走行安定性や燃費性能を高次元で成立しています。

図6 4WDの不要な乾いた舗装路走行

後輪へのエンジントルク配分を最小化して2WD(FF)状態に近づけ,不要な後輪エンジントルク配分によるエネルギーの無駄を無くして燃費性能に貢献。このエンジントルク配分は自動制御のため,予期せぬ滑りやすい路面や不意の横風などにも柔軟な対応を可能にしています。

以上が,色々なシーンでの 4WD の作動解説でした。

おいおい,どこにも「積雪路」のことは書いてないよ(汗)。
Legacy から学んだ経験を思い出しながら(でもちゃんとスタッドレス履いてました),AT をマニュアルモードの2速に固定し(これはマニュアルにあったと思う),そろそろとアクセルを踏みます。

エンジンは,1,500回転付近をキープ。
しばらく平坦路が続きますが,対向車に出会わないことを祈りつつ走ると,案外スルスルと前へいきます。

自宅直ぐの直線路でブレーキテスト。
私は,冬の到来の時,一番始めにこれをやります。
走るのはアクセルを踏むだけですが,止まるかどうかが事故につながらない大きな要素ですから。

幸い,20km程度なら止まってくれました。
2速のままゆっくりと右コーナーへ進入。
ステアリングを繊細にゆっくりと切ります。

i-DM が付いていますよね。
あれで,5点満点取るくらいの気持ちで走るとイメージして頂ければ丁度いいです。
しかし,途中左折するところあるのですが,曲がろうとすると,既にスタッドレスに履き替えた軽トラのおっちゃんが勢いよく走ってきて,思わず急ブレーキ。
車は,大きな振動と共に何とか止まって難を逃れました。

田舎のくせに信号がありまして,何とそこが緩い登り坂になっているのです。
生憎「赤信号」じゃありませんか。
坂の手前で停止し,青に変わると,本当にゆっくりとアクセルを踏みます。

右へ緩く曲がりますので,大きく曲がるつもりでステアリングを切ります(急ハンドルは厳禁です)。
そこからは,2車線道路ですので,唯我独尊状態で走ります。
後ろから車が来ても,勝手に追い越してもらいます。

いよいよ,下り坂に差し掛かろうとする手前で一旦停止。
再度2速固定状態を確認して発進。
座席が高いので,下り坂は勾配を感じやすくなってしまうなぁ,と思いながら,アクセルを殆ど踏まずにエンジンブレーキ任せ。

この時,通常走行ですと,速度が上がっていくにつれて,AT が思わずシフトアップしてしまう場合がありますので,「マニュアルモード」が正解。

凍結路もそうですが,「下り坂は如何にブレーキを踏まずに下るか」がコツです。
決してフット・ブレーキに頼ってはいけません。
ABS があるじゃないかと思われるでしょうが,あんなもの,こんな時には「屁のつっぱりにもならない」と思った方がいいです。

おまけに,1,620kgもある巨体が滑り出したら,最早どうすることも出来ません。
私は,免許を取った年の冬に下り坂で車を滑らせてしまい,横転して壊してしまいました。
クロカンブームの時,4WD にあれ程事故が多かったのは(それも圧倒的に下り坂),4WD を過信する余り,重量物が滑った時の怖さを知らなかったからです。

何とか平坦路までおりてきますと,道には雪がなくなっていました。
安全のために,マニュアルモードのままで走行します。
マニュアルモードだったら,シフトダウン出来るしギヤがわかりますから。

平坦路に出る途中,「これは滑ってるな」と感じたのは,右側の轍は対向車も走りますので(つまり道に轍は3つしかない),比較的雪がなかったのですが,左側には雪が残っていて,そこを通過する時,右と左の車輪の回転差が生じたのでしょう。

一瞬,左車輪が空転する感覚がありました。
尤も,これは,私の「お尻」が感じたことです。
車は横滑りすることなく通過しています。

この経験で分かったのは,決して回転数を2,000回転付近まではあげないこと。
何故なら,最大トルクを発揮しますから,下手をするとトラクションがかかりすぎて,タイヤが空転する畏れがあります。

車に慣れてくると,少しずつ速度を上げ,ギヤも3速に入れますが,それでも40kmを限界速度にしています。
それも見通しのきく直線路のみです。
4速にシフトアップしようとしましたが,速度が低くて出来ませんでした。
Legacy は,アップ・ダウンのインジケーターがあって,それを知らせてくれたので,とても便利でした。

それと,マニュアルモードでは CX-5 も Legacy と同じくスピードが落ちていくとシフトダウンしてくれます。
なので,止まる時は,ブレーキを出来るだけ踏まずにシフトダウンさせ(アクセル・オフ),ブレーキは停止する直前に「ちょん」と添えるくらいです。

帰宅は,スタッドレス・タイヤを履いているので,少しスピードアップしてみましたが,場所によってはやはり滑る感覚があります。
登坂は,2速かよくて3速。
ここでもトラクションのかけ過ぎは厳禁。
下手をすると車が横を向きます(FR 車の Chaser の時は横を向きました)。
何にせよ,車の安全装備を過信せず,細心の注意をはらうことが肝要です。

以上,早すぎる雪の到来を迎えましたが,CX-5 を買って良かったと思う1日でした。
ちなみに,i-Stop はオフで走っています。
午後9時現在,雪は降っていませんが,しんしんと冷え込んでいます。
明日は,「凍結路」の体験が出来そうです。

翌日(2012.12.10)は,予想通り「凍結路」で,おまけに夜間に降った雪がうっすらとのっている状態でした。
2速固定にして発進。
スタッドレスに履き替えているので,トラクションをかけない限り滑ることはありません。

平坦路では,2速から3速へシフトアップします。
速度は30kmくらいで,エンジンは1,700回転くらいです。

危険性からいけば,凍結路 > 積雪路(圧雪路)といっていいと思います。
スタッドレスは,積雪路はグリップしてくれますので,余程のスピードを出していない限り,少しラフな運転でも破綻をきたすことはありません。

しかし,凍結路では,スピードとラフな運転は厳禁です。
特に右左折やコーナーを曲がる時は,ステアリングをゆっくり切って,惰性で曲がるような感じが大切と思います。
アクセルを踏んでいくのは,コーナーを完全に立ち上がり,ステアリングが真っ直ぐになってからでないと,車が流れる可能性があります。

FR のドリフトをイメージして頂ければいいです。
ドリフトの場合は,車はコントロール下にありますからいいですが,不意に滑り始めた時は,コントロールを失った状態を意味しますので,本当に危険です。

上記は,平坦路でのコーナーですが,私の経験上,FR 車で怖かったのは,登坂時や下りの時のコーナーの通過です。
登坂時は,アクセルオフにすると失速しますから,ステアリングを切り込みながらアクセルを開け具合を調節しますが,開けすぎるとトラクションがかかって,車輪が空転する憂き目にあいます。
車任せもいいのですが,その限界を知っていてはじめて可能なことと思います。

下りのコーナーは,エンジンブレーキに頼りつつステアリングを切ります。
下りはスピードを上げないことが肝要で,特にコーナーはスピードが速いと,怖くなって思わずブレーキを踏んでしまい事故になる場合があります。
下りは,後ろから煽られても「どこ吹く風」といった気持ちでゆっくりと走る方が安全です。

CX-5 ですと,固定2速ではエンジンブレーキがしっかりきいてくれますので,そのまま平坦路までおりることが出来ました。
勾配によっては,回転数が上がりますが,問題はありません。
寧ろ,それを嫌ってシフトアップしますと,スピードが一気に上がり,ブレーキを踏む羽目になる方が危ないです。

登坂でも,2速固定であれば,30kmくらいで登ります。
下から惰性をつけて登ろうとすると,ともすればスピードオーバーとなり,グリップを失った時大変な目に遭います。

マニュアルでは,大体2,000回転くらいにならないとシフトアップしてくれない感じでした。
ですから,2速・30kmで3速へ,3速・40km + αで4速の感じです。
4速は平坦な路面でしか使用しません。

気温や勾配も制御要因になっているのか否かまでは,今のところ分かりません。
上記のことを考慮してシフトアップしましたが,私の感覚では,場面によって「あれっ」と思う時がありました(アップしてくれない)。
シフトダウンは,ブレーキ又はアクセルオフで減速していけば,勝手にシフトダウンします。

急な積雪と凍結でしたが,CX-5 の 4WD の特性が少しは理解できました。
スタッドレスに履き替えてからは,スピードを控えめにさえしていれば,ほぼ「磐石」ではないかと思われました。

アイポイントが高いので見通しがきき,両側にガードレールがあるコーナーですと,アイポイントの低い車は,ガードレールが邪魔になって見通せない時がありますが,それも問題ありません。

低回転からトルクが出ますので,アクセルも殆ど踏まなくて済みます。
ガソリン車の場合,登坂時に失速しかけてアクセルを踏むと,キックダウンというおまけがついて車輪の空転を招き,怖い思いをする時がありますが,1,500~2,000回転で全てこなしてくれます。

冬場の発進は,マニュアルの「固定2速」でいくことがコツと思います。
昔から,ディーゼルの場合,2速発進というのをよく聞いていました。

もう少し CX-5 に慣れてくると,スピードの限界も見えてくるのかも知れません。
今日は,安全第一で「亀」になることを心がけました。
購入したスタッドレス・タイヤは,ブリジストンの BLIZZAK DM-V1 で,サイズは225/65R17 102Qです。

「生活4駆」などと揶揄される方もあるでしょうが,CX-5 の場合,完全な「スタンドバイ4駆ではない」感じがしています。
というのは,普通前輪のスリップを感知してから,後輪に駆動力をかけていくと思うのですが,それだと「微妙なタイムラグ」が生じ,人間の感覚と一致しない場合があるのではないでしょうか。

即ち,ヒヤッとした感覚と車の応答のずれがある。
私の経験では,今のところそれを感じる場面がありませんでした。
それは,ウエット路面を走っていても同じです。

Legacy の場合はといいますと,走行時は,感覚的には Full Time なのかどうか分かりませんでした。
お前の感覚が鈍いだけだといわれそうですが,後輪に駆動力を配分していることを感じた場面がないのです。
その意味では,CX-5 も同様の感覚を持っています。

MAZDA 技報の「新世代 4WD システムの紹介」を紐解きますと,冒頭に,

刻々と変わる路面状態をリアルタイムで把握し,『ドライバが車輪のスリップを感じる前』に前後輪の駆動力配分を高精度で制御する新制御システムを構築した。

という文言があります。

又,4WD システムの定義として,

後輪駆動力が必要な時をエンジン駆動力が前輪グリップ容量を超える直前とし,必要十分な後輪駆動力を,前輪グリップ容量を超えさせない最小限の後輪駆動力配分とする。

とあります。

そして,

雪路走行中のタイヤのスリップ比-摩擦力の特性とドライバのスリップを感じる特性を計測すると,タイヤが駆動力を伝えてスリップ比が発生する現象において,ドライバが気付くスリップ比はある程度大きいことが判明した。そこで,スリップ比検知しながらスリップ比コントロールのため 4WD 制御の介入できる余地「不感帯」がある・・・・

という解析もあります。

専門的で良く理解できませんが,「スタンドバイ4駆」の進化版と考えていいのでしょうか。
端的にいえば,人間がスリップを感じるタイムラグの解消に主眼があるのかも知れません。

不幸中の幸いというべきか,おかげで CX-5 の特性も少し見え,冬期のドライブ感覚が蘇ってきました。
それにしても,17インチタイヤは足下が軽くなっていいですね。

ドライでのスタッドレス・タイヤのグリップの悪さも手伝って軽快に走ります。
本当は,標準の17インチが正解かも(維持費も安いですし)。

最後に,私の車特有のものかも知れませんが,ドライと凍結がまだらに続く道では,後部にハーシュネスを感じたことを報告しておきます。
最後までお読み頂きありがとうございました。

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