給与制度をたびたび変更する職場には注意した方がいい

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給与制度というのは,人事制度の大きな柱です。
それは職員の生活を保障するものであり,その制度の健全性があるからこそ安心して働けると言えます。

私は,医療法人で給与の仕組みを作ってきたからわかるのですが,制度の変更が必ずしもあなたのメリットとはならない場合があります。
今や病院は,税引き前の利益が医療収益の5%あればよい方です。
そのような中で,人件費を少しでも抑制しようという動きが出てくるのはある一面では仕方のないことだとは思います。

問題は,その変更について在籍する全ての職員個々に説明を行い同意を得ているかどうかです。
私も,一度給与制度を大きく変更することに携わったが,全ての職員さんに説明し,書面で同意してもらいました。
その場で同意される方もあれば,保留される方もありました。
私は,制度の変更によって,退職者が出てくることも覚悟していましたが,幸いなかったと記憶しています。

各種手当ての金額を上げる場合には,対象となる職員さん全てに恩恵があるので,全体の会議でそれを流せばすむのですが,基本給などの仕組みを変えてしまう場合は,全ての職員さんに恩恵があるとは限らない場合があります。
即ち,賃下げになってしまうわけですが,そこをしっかり説明しないまま実行してしまうと,生活の保障が成り立たなくなってしまいかねません。

一般に,給与制度の変更は,前述のように「抑制」を目的とする場合が多いです。
しかし,職員さんは,そんな制度について考えたこともないし,職場を信用しているので気にもかけることはないでしょう。
また,組合がある職場は極めて少ないため,職員さん個々に説明しないでも行ってしまえます。

経営者は,職員さんの生活を保障する義務があると考えるのが通常であり,そのための給与制度なのですが,中には法人(病院・施設)のことしか考えず,結果的に職員さんの生活を破壊してしまうこともあります。
特に,職員さんの定着を考えない経営者ほどその傾向は強いと言えます。

問題は,法人の存続と職員さんの生活保障とのバランスだと思うのですが,職員さんを軽んじているほど法人にウエイトは高まってしまいます。
何よりも,職員さんの存在があっての法人であることを失念しています。
そして,去る者は追わずの姿勢であるから,仕事のできる職員さんは残らなくなってきます。

普通の会社であれば,技術職の流出は会社を弱体化させるのですが,病院や施設はそうではありません,
診療報酬や介護報酬制度では,職員の質を問う項目がないため,必要(法定)人数さえ揃っていれば,医療保険から支払われます。
もちろん,看護師などの国家資格所有者の数も決まっているから,大量に退職されてしまった場合は存続が危ういのですが,そのような事態はめったにありません。

そこが経営者を甘くしているところだと私は思っています。
国家資格さえ所有していれば,職場に来て就労時間中は何もしなくていいという病院があると聞いたことがあります。
要は,数さえいれば満額の支払いを受けられるわけですから,その努力さえ怠ってしまいかねません。

官庁の担当機関もそこまでの実態を把握できないので,何ら規制することは不可能となっています。
病院の質を高めようとさえ思わなければ,制度の盲点を突いて医療保険の支払いを受けることは可能です。

一般の職員さんからすれば,そのような実態を見抜くのは困難なのですが,兎に角,給与制度を再三変更してくる職場には長居は無用かも知れません。
特に,基本給などの仕組みを変更するところは,賞与や退職金さえも変わってくるので注意が必要と思います。
法人も苦しいのは理解できますが,「職員さんあっての法人である」ことを基本に据える姿勢は崩してはなりません。

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