給与の支給項目について

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給与の支給項目(名称)は職場によって異なります。
従って,今までの職場と支給明細が異なる場合,項目の意味を確認しておく方がよいと考えます。
ここでは,多くの職場が使用しているであろうと思われる項目を挙げていきます。
又,月例給与だけではなく,ボーナス(以下「賞与」)や退職金についても記載しています。
尚,項目については,日本で最も多い医療法人が経営する病院及び社会福祉法人が経営する介護施設の事例を示しています。
下記の事例では「法人」という言葉がよく出てきますが,「病院」又は「施設」と読み替えて頂いても結構です。

基本給

基本給は,賞与や退職金算定の基礎となるものです。
又,1年間の勤務実績に基づいて昇給していく項目です。
新卒の場合は,給与表の最も低い金額から開始します(初任給という)。
経験者は,経験を加味した基本給を支払う法人が殆どですが,中には,下記の「経験給」という項目を設け,例えば,経験10年の方の場合,それぞれ5年分を基本給と経験給に振り分けるところもあります。
どうしてこのような手段をとるかというと,経営側は少しでも人件費を抑えたい方針を持っており,振り分けておけば,その分賞与も退職金も抑制できます。
関連記事:初任給はどのように決定されているか
関連記事:昇給について

経験給

先に書いたように,実務経験を評価して支払う項目になります。
経験手当と称している職場もあります。
ここは,上述のように入職時に評価した金額を固定するところが多いと思います。
関連記事:実務経験はどのように評価されるのか

調整手当

この項目も経験給と似ていますが,必ずしも経験だけを評価しているだけではなく,さまざまな意味が込められています。
従って,最も曖昧な項目ともいえます。

役職手当

職場によって,役職者の名称は様々です。
又,どの時点から支払い対象にするかもそれぞれの職場で異なります。
毎年昇給させていくところもあれば固定金額のところもあり,同じ役職名がついていても職場によってその金額は異なります。
又,ある役職に就いた時点から,下記の時間外手当の対象外となるところが多いです。
所謂「病院側の職員」という位置づけになり,労働基準法にいう「管理・監督の地位にある者」ということになります。

資格(職務)手当

これは,薬剤師や看護師等の資格を持った方に支払う項目で,具体的には下記の職種が対象になります。施設では,ヘルパーの資格者も対象としているところもあります(要確認)。

1.薬剤師
2.看護師
3.准看護師
4.理学療法士
5.作業療法士
6.診療放射線技師
7.臨床検査技師
8.管理栄養士又は栄養士
9.臨床心理士
10.精神保健福祉士
11.社会福祉士
12.介護福祉士
13.介護支援専門員(ケアマネージャー)

13の介護支援専門員については,資格取得前にベースになる国家資格(例えば看護師)がある場合,その資格の金額を支払うところと,職務が異なるので介護支援専門員の金額を支払うところがあります。

従って,ご自分が看護師で,法人が経営する居宅介護支援事業所のケアマネージャーの仕事をやりたいと申し出た場合,資格手当が下がってしまうケースが出てくるので注意が必要です(資格手当の金額は看護師>介護支援専門員となっている職場が多い)。これはケアマネージャーとして採用された場合も同様です。

殆どの法人は職種によって金額を変えています。
これも有資格者に対して経営側の考えが反映する項目です。
一例を挙げれば,基本給の高いところはこの項目が低い傾向にあり,逆に基本給が低いところは高い傾向にあると思います。

「専門看護師」の方が少しずつ増えてきていますが,それを積極的に評価してくれる職場とそうでない職場に分かれており,評価してくれるところ(給与に反映する)はまだ少ないのが現状ではないでしょうか。

夜勤手当

この項目は,主に病棟や施設の療養棟に勤務する方に支払われる手当です。
金額は3交代と2交代で異なり,大抵は労働基準法で定められている「深夜割り増し」の賃金も含まれています。
職場によっては,「深夜割り増し」の賃金を別に計算した上で夜勤手当を定めているところもあります。
この金額は,概ね急性期の病棟をもつところが高く,慢性期の患者さんの入院している療養病棟などでは低い傾向があります。
看護師,准看護師で差がある職場と同額の職場があります。

時間外手当

これは,当然勤務時間外に労働した場合に支払われるものですが,多くの職場は報告書を要求します。
所属長の決裁を経て上がっていくのですが,中には認めてもらえないケースも出てきます。
ですので,報告書には時間外労働をせざるを得なかった理由を明確に書く必要があります。

本来ならば,時間外労働は所属長などの命令で行うものであり,自発的に行ったからといって対象となるとは限らないので,時間外労働をしなければならない場合は,所属長に一声かけておくことが肝要です。

時間外労働が,22:00から翌朝5:00までの時間が含まれる場合は,その時間は上述の「深夜割り増し」となり,計算方法が変わってきます。

時間外労働は,時間給に割増分を乗じて計算しますが,時間給は基本給を1ヵ月の総労働時間で割るだけでは不十分で,例えば,経験給を支給されている場合はそれも含めた上で計算しなければなりません。
給与明細に時間外の労働時間が書かれているでしょうから,支給金額を労働時間で割ってご自分の時間給を把握することも大切です。
関連記事:時間外手当の計算方法は?
関連記事:あなたは自分の時間給を知っているか

宿直手当

宿直手当は,事務職員等が,主に建物の保全などを目的として宿直した場合に支払い対象となります。
夜勤は,職務内容が明確に決まっていますが,宿直の場合は「待機」が基本原則ですので,原則的にはこれといったルーチンはなく,せいぜい建物の定期的な施錠確認が多いです。

家族手当

家族手当は,本人が扶養している家族が対象となります。
(1)配偶者
(2)子
(3)親
配偶者でも,年収が130万円を超えている場合は支給対象とはなりません(本人が税金を支払う義務がある)。
毎年度当初に,所得証明書の提出を義務づけているところもあります。
子の場合は担当部署で最初に提出した家族調書で年齢を把握できますので,非該当になると支給停止を行えるのですが,親や配偶者の場合動きを把握できないので,所得証明書によって対象か否かを判断します。

子の場合,高校卒業(又は満18歳)までと大学卒業(又は満22歳)までの2通りあります。
大学生で浪人して入学した場合は,満22歳で支給停止となるケースが多いと思います。
又,留年してまだ学生であると言っても,それは通用しないと思って下さい。
複数の子がいる場合は,全て同額の職場と,第一子は高く,第二子以下は低くなっている職場があります。

親の場合,自分が扶養していたら年齢を問わない職場と,満60歳以上のように年齢を決めているところがありますので,扶養している場合は確認が必要です。但し,配偶者と同じ条件を満たしている必要があります。

年度の途中で親や配偶者が仕事に就き,12月末までの所得が130万円を超えると予想される場合,予め申し出ておく方が無難です。
何故ならば,130万円を超えた時点で非該当になりますので,それ以降も支給されていた金額の返還を求められるケースが出てきます。
参照:親は可能ならば扶養に入れてあげよう

住宅手当

賃貸マンションなどの借家にお住まいの方が対象です。
全額支給の職場は余りないと思います。
大抵は支給限度額が決まっており,それ以上の家賃を支払っていてもその差額は対象となりません。
例えば,支給限度額が3万円となっている場合,家賃が25,000円であれば全額,35,000円であれば30,000円が支給されます。
持ち家の場合,ある金額を一定期間支給してくれる職場と,非対称の職場があります。
借家住まいの者だけが支給されるのは不公平と感じるかも知れませんが,それは法人の考えですので致し方ありません。

通勤手当

これは,法人側は支払い方が難しい項目です。

通勤手当は,支給限度額を設けているところが多いのではないでしょうか。
この限度額によって,法人が職員を求める圏内が見えてきます。
限度額が5万円の場合はかなりの距離から通勤しても本人は赤字になりませんね。
ところが2万円までしか支給しないと言われると,自分が赤字を出してまで勤めようと思う気がしなくなりませんか。

かように通勤手当は,一見簡単なように見えて奥深いところがあります。
又,一例として,月のうち2,3日欠勤した場合などは問題とならないのですが,月の2/3を欠勤や有給休暇を取得した場合は差し引かれる可能性があります。
参照:通勤手当の合理的な支給方法はない?

年末年始手当

これは,年末年始休暇の間に勤務した職員に支払われる手当です。
私の法人では病院,施設とも同一金額でした。
職場によって分けているところがあるかも知れません。
参照:年末年始手当は安すぎると叱られた

食事手当

最近は殆どないと思いますが,一昔前は,福利厚生の一環として支給している職場がありました。

賞 与

賞与は6ヵ月の勤務実績に応じて支払うことが通例です。
計算式は,

基本給×Xヵ月

としているところが多いです。
Xの部分は夏と冬で変えているところや同じところがあります。
それ以外に役職手当を何ヶ月分か支給しているところもあります。

職安の募集要項には賞与が示されていますが,WEB サイトや新聞の折り込みには明確にしているところは少ないです。

中途採用の場合,入職時期によっては,満額支給されない場合が多いです。
例えば,夏の賞与の実績期間が1月から6月末までとします。
あなたが4月1日づけで採用された場合,実績は4,5,6の3ヵ月しかありません。
この場合は,基本給×Xヵ月×3/6 の計算となります。
この計算方法も職場で様々ですから,初めて賞与をもらった時,疑問を感じたら担当部署に尋ねることをお勧めします。
さらには,実績が一定期間(例えば2ヵ月)ない場合は支給対象にしないところや,上記の例でいえば,6月に入職した場合非対称とする職場もあります(この場合実績1ヵ月の者は非対称となる)。

対象期間内に欠勤があった場合は,支給額から差し引くところが多いです。
日給×欠勤日数とするところや欠勤3日に対して1日分を控除するなど,計算式は様々でしょう。
遅刻・早退も控除の対象となります。

退職金

退職金の基礎になるのは基本給です。
これに勤務実績からはじき出した係数をかけます。

ここで係数という表現をするのは,あなたが10年勤続して退職するとした場合,単純に 基本給×10とはならないからです。
即ち,法人内で係数表のようなものがあり,10年の場合,係数が9.5と定めているのです。
長く勤務すると,この係数が勤続年数よりも大きくなるようにしている法人もあります。実績が20年の場合,25というように。

もう一つの係数は,退職理由によるものです。
自己都合は0.8,定年退職は1.1のように定められています。
従って,退職金の計算式は下記のようになります。

基本給×勤続年数係数×退職理由別係数

繰り返しますが,これも法人によってさまざまですので,上記は事例の一つとお考え下さい。

まとめ

以上,私の実務経験に基づいて,代表的と思われる項目について,支給の考え方を細かなところまで書いてきましたが,いかがでしょうか。
給与は,労働に対する対価 が基本です。

給与については,意味不明なままもらい続けるのは精神的によくありません。
あの人にはあって自分にはないのかなど,疑心暗鬼になっていくだけですので,不明な点はどんどん質問しましょう。
勿論,法人の考え方がありますから,全てに納得がいかないかも知れませんが,少なくとも支給の意味くらいは理解できると思います。
又,あなたの質問に対して誠実に対応しない法人だったら,さっさと辞めた方がいいと思います。
入職時に人事担当者が説明してくれると思いますが,その際にも遠慮なく疑問点は質問して下さい。

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