森友学園問題 2

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ワイドショーのはしごをしても,似たり寄ったりの内容なので食傷気味になっている。
今日も,籠池理事長の学歴詐称疑惑や国土交通省と大阪府に提出した総事業費の違いなどのネガティブキャンペーンのオンパレードで,安倍 昭恵首相夫人が 30もの団体などの名誉顧問や名誉会長になっているという報道もあった。
ご本人も何故こんなに大騒ぎになっているのか理解しかねているらしい。
ここから見えてくるものを私なりに記してみたい。

「権力」とは何か

極めて抽象的な概念であるが,多かれ少なかれ自分の周りでそれを感じない人は希であろうと思う。
何を言いたいかというと,安倍 昭恵首相夫人と籠池 泰典理事長とは「権力」に対する考え方(感じ方といってもいい)が真逆であるということである。
先ず,安倍 昭恵首相夫人は,恐らく「権力」に無頓着であろうと思われる。
昨日東京都で開催された集会で,夫人は,
「首相夫人になってから,急に活動の幅が広がり,色んなところや人達から色んなことを頼まれるようになった」
と述べている。

「こんな私で役に立つことがあれば」とご本人は考えておられるかも知れないが,相手は,「あなた」が欲しいのではなくて,あなたの背後の「権力(威光)」が欲しいのである(だから首相夫人になった途端に周りがすり寄ってくる)。
基本的には,この方は謙虚な人なんだろうなと思う。
何故なら,自分の無力を強く意識している人は,頼られると凄く嬉しくて感激してしまう傾向にある。
又,首相夫人の肩書きが持つ重みを余り意識していないように思える。

元々権力志向の薄い人は,自分が出世しても,その重みを実感できない。
周りからそれを言われると戸惑ってしまう場合もある。

私事で恐縮であるが,私も人事権や給与の決定権を持つ職責を与えられた時,そのような地位を目指していたわけではないので,周りの人の態度の変化に戸惑った覚えがある。
今まで距離が遠かった人が急にすり寄ってきたり,逆に近いと思っていた人物に距離をおかれたりした。
すり寄ってきた人は,私のインサイダーになりたい人であり,距離をおいた人は,我々の仲間でなくなったと認識したのだろう(現に,お前は変わってしまったと言われた覚えがある)。

このような人の行動の変化を全く予想していなかったので,半年くらいは,非常に孤独に感じたと記憶している。
ただ,そこで私が決めたことは,どちらにも近づかないということ。「一人」を覚悟することと言ってもいいかも知れない。
そのうち,前者は余り近寄ってこなくなり,後者は,(個人としての)私自身は変わっていないことを理解したのか,関係は修復されていった。

私は,ある時,年長の方から,
「あなたは組織の5番以内にいるのだから,それをしっかり認識しなさい」
と諭されたことがある。
その方は,別の職場から転職されてきた方で,私の上位の役員だった。
その方は,組織の上位になることの意味を良く理解しておられて,忠告をしてくれたと思う。
しかし,その時,まだ自分にはその感覚が分からなかった。結局,その辺が分からないまま退任した。

私は,昭恵夫人も同じだと思う。
念のために出自を調べてみると,父は森永製菓の元社長で,母は森永家の長女となっている。
これは,何を示すかというと,既に権力を握っている家庭で育った方であり,そんなことを意識する必要もなかったのではないかということである。

安倍 晋三首相にいたっては自明の理であろう。
夫人の背後にある権力(威光)を利用しようと企む人達にとっては,極めて利用しやすい人格だろうと思う。
ここに,夫人の脇の甘さがあったのだろう。

反対に,権力の階段を苦労して登ってきた人は,どうしても周りにそれを見せつけたい欲望や,それを行使したい欲望に駆られてしまう。
例えば,

部長:○○課長,今度家内が自宅でお茶会を開きたいと言っているので,何人か呼んでくれないか。
課長:(困ったな。こんなこと私用じゃないかと思いつつ)分かりました。

と答えてしまう。件(くだん)の課長は,周りの部下や同僚に頭を下げて,何とか人数を集める。
これは,部長の権力にあらがえない姿を示している。
部長の奥さんも主人の権力を使って,自分の地位を誇示しようする姿勢が見える。
そして,お茶会に参加した奥様方を値踏みする。
即ち,主人の地位=自分の地位なのである。
笑えない話として,次のようなエピソードがある。

ある銀行の副頭取は,毎年正月2日に,部下と自宅で新年を祝うことを習慣にしていた。
現役の時は約100名くらい集まっていたらしい。
そして,退任した翌年の正月2日。副頭取は,今年は何人くらい集まるだろうかと思いながら,夫妻で準備をしていた。
しかし,開催時間になって集まったのは5名に満たなかった。副頭取は,途端に不機嫌になり,会は解散となってしまった。
この事例は,「副頭取」という肩書きに集まっていたことを理解していないことを示している。

私も,若い頃行政の役人と話をしていて,その方がこう言ったのを覚えている。
「○○さん(私のこと),あなたは私の肩書きに頭を下げているのであって,私に頭を下げているわけではないですよね」
この方は,一向に役人面をしない気さくな人で,当時としては珍しかった。

籠池理事長夫妻は,阿倍夫妻とは全く正反対の姿勢が見える。
失礼ながら,このような人は「権力」に敏感であるから,交渉相手よりも「権力」のある人を頼ろうとする(力関係からいって当然のことであるが)。
組織のヒエラルキー構造をよく知っていて,役人もその種の人種だから,必ずいうことを聞くと思っている。

その証拠に,園児を人質に取っている強みなのか,園児の父兄には慇懃な口をきいている。
上にはへつらい,下には慇懃になる。典型的な権力志向のキャラである。

現に,今日の放送でも,色んな人の威光を徹底的に利用しようとしている。
利用される側も,問題になるまでは,「自分も偉くなった」と錯覚していた人物もいるだろう。
それまでは,何も言っていなかったのに,問題になった途端,被害者面を始める人達。あなた方も権力志向ですよ,といいたい。

又,近畿財務局や大阪航空局の当時の担当者は,この法人の教育方針を知らなかったため,こんなに問題になってしまうことが予想できなかったのではないか。
東京都の豊洲問題じゃないけれども,「水面下」で話が終わると思っていたのだろう。

しかし,朝日新聞にかぎつけられて歯車が狂ってきた。
鴻池議員しかり,近畿財務局や大阪航空局しかり。
さすがに財務省はヤバイと思ったのか,途中(発覚前)から廃棄物処理費用の積算については,地主の大阪航空局に任せ,その数字に基づいて契約するという方針を明確にしている。

ここで財務省は逃げ切りを図り,大阪航空局に責任を押しつける感じになっている。
大阪航空局側は,異例ではあるものの費用の積算を行ったことに対する適法な理屈を持ち合わせているのだろうか。
私は,希なケースではあっても,何らかの前例があったから実行したのではないかと推測している。

役人は,前例主義が基本なので,新しいことを交渉に行っても,「前例がない」と言ってなかなか腰を上げてくれない。
もう一つ推測できるのは,学校運営は,純粋な営利事業ではなく,半公的事業であるという大義名分である。
であるから,半ば特殊な事例であっても,止むなしとしたという弁明。

ここでの籠池理事長の失敗は,今日の放送にもあったが,総事業費の二重申請。
しかも,同一日の契約書なのに,国と大阪府に提出した金額を変えている。これは,おそらく業者に同じ契約書を作成させた可能性が高い(産経新聞)。

ここにおいて,前述のように,大阪航空局に擁護してもらえるような大義名分を失ってしまった。
こんなゲスなことをしないで,クリーンな数字を出しておけば,教育方針はさておいて,法人側としても抗弁することが出来た。

私も新規事業で国の補助金申請をしたことがあるが,補助金額算定にからむ数字については絶対に間違えてはいけない(捏造してはいけない)。
下手をすれば詐欺罪に問われてしまう(松井知事も記者会見で言及していた)。

実務はコンサルがやっていたのだろうが,コンサルが理事長に進言したのか,理事長の命令でやったのかは分からないが,全くお粗末である。
勿論,最終的には大阪航空局の担当者が現場確認を行い,支払った領収書の合計から再計算して,精算すると思うが,ここまで問題視されてしまうと,大阪航空局としても,目のつぶりようがない。

補助金は,通例完成までに100%支給されることはなく,幾らかの余力を残しておき,精算時に残りの金額を確定するので,問題とならなかったら,残りを精算して終わっていた筈である(若しくは,完成後,現場確認及び領収書の総額から再計算して金額を確定する)。

一方,逃げ切りを図った近畿財務局であるが,工事業者の打合せ記録に,「場内埋め戻し」の件は近畿財務局側から話が出たと記載されていると報道されてしまった。

この発言が,産業廃棄物処理法違反であれば,事は看過できない。
役人自らが違法行為を依頼したことになってしまう。
ここでの焦点は,近畿財務局の担当者が,明確に場内埋め戻しを依頼したか否か。

ここは非常に微妙で,近畿財務局は,話を出したのは業者側であって,こちらが依頼したわけではないと抗弁する可能性がある(何せ,日本のお役人さんは決して誤りは犯さないという暗黙の不文律がある)。
私も,明らかに係官のミスなのに,こちら側のミスとして始末書の提出を要請された覚えがある(こっちが泥を被る)。

この可能性を察知したからこそ,業者側としては自衛の手段として,打合せ記録をリークしたのかも知れない(黙っていたら,業者が勝手にしたと弁明される可能性があり,産業廃棄物処理法違反に問われる)。

それにしても,私が腑に落ちないのは,近畿財務局の担当者が明らかに違法となることを発言するだろうかということである。
例えば,「場内埋め戻し」の前に,「ゴミをとり除いた土を」という一文を加えたらどうなるだろうか。

即ち,「ゴミをとり除いた土を場内に埋め戻す」ことは完全なる違法なのだろうか(現に現場で行っている作業はこれだと思う)。
この微妙なニュアンスをマスコミは伝えてくれない。

又,処分費用が約8億円余りとかなり高いのではないかとの疑念も,近畿財務局が未だ契約を締結していないのであれば,大阪航空局は,
「処分費用が確定してから再計算を行い,近畿財務局に最終報告する予定だった」と弁明でき,近畿財務局も「その報告を待って,売買価格を最終決定する予定である」と弁明できる(どのマスコミも,売買契約書の内容の一部は報じても,既に締結済であるとは明確に報じていない)。

おそらく,鴻池議員も危うさを悟って,マスコミと会見することによって「自首」しようとしたのかも知れない。
「カネとおぼしきものはその場で突き返した」
「献金は返す」
ことによって,面会記録の内容は,陳情に対して通常政治家が行う業務になり,鴻池議員は逃げ切ることが出来た。
その前段階として,面会記録が共産党に渡るように画策し,国会で浮上させるという布石をうった。
こんなストーリーを組み立てた人間がいるとすれば,この事件の終末はどのようなものだろうか。

1.会計検査院が,会計検査を行い,「適法」であったと結論づける
2.大阪府が「不認可」とし,開校の可能性を絶つ。
3.財務省は,学校法人に対し,契約書の条項に基づき更地にして返還する命令を出す(国が買い戻す)。

こんなところではないだろうか。
法人側が,損害賠償請求を起こそうとすれば,逆に工事請負契約書の捏造に基づく「詐欺罪」で訴えられてしまうだろうし,それを回避するためには,上記3を飲むしかないだろうと思われる。

私は,一般常識に照らして問題とされない教育方針で,且つ,工事請負契約書の捏造がなければ,この事案は,世間を騒がせることなく,多少の懸念はあれども,この4月に開校できる見込になっていただろうと思う。
朝日新聞の取材に対しても,近畿財務局と大阪航空局は,上記のような抗弁を持っていたに違いない。

「天の声」がバックについているという籠池理事長の驕りが,杜撰な書類の提出を生み,この様な結果を導いてしまったのかも知れない。
又,うがった見方をするならば,何らかの勢力が,これを前例として,同様の行動を起こそうとしていたのかも知れない。

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