些(いささ)か意味深なタイトルになってしまいましたが,27日の北海道新聞の電子版に「「人を殺してほしくない」安保法施行目前,自衛官の家族が相談」という記事があり,安保関連法がこの29日に施行されるに当たり,弁護士が相談会を開催したところ,お子様や娘婿が自衛官のご家族が,自衛隊が戦闘に巻き込まれるのを懸念しているとの相談がありました。
安倍内閣は,3月22日安全保障関連法の施行日を今月29日とする政令を閣議決定しました。
これは,集団的自衛権の行使などを可能とするものです。
「集団的」とあるように,日本が巻き込まれた場合だけではなく,米軍などの諸外国の軍隊と共同して「防護活動」にあたれるようになります。
そうなりますと,如何なる危険な地域にも出動しなくてはならない。
もし,そこが戦闘地帯であるならば,当然戦闘に巻き込まれ,死ぬ可能性もあるわけです。
現実にその様なことが生じれば,除隊する方々も出てくるでしょうし,現に防衛大学校でも,任官拒否が前年度の倍になっています。
冷たく言い放てば,入隊する以上そんなことは分かっていた筈です。
命令されれば,自国民にすら銃を向けねばならない。
それが軍隊というものです。
ただ,私達が日本国民としてそれを望むかどうかです。
日本は,第2次世界大戦後,「戦争(紛争)に参加していない」国であるということで,諸外国から評価されている側面があります。
諸外国の政府ではなく,国民の方々からです。
「戦争を知らない子供達」が大人になって国会議員や官僚になり,国を運営しています。
第2次世界大戦は遠い昔のことであり,戦争の悲惨さは全く知りません。
私の父は,第2次世界大戦の時,徴兵で満州に行き,戦後シベリヤに抑留され,帰国できたのは昭和23年でした。
何度か頼んだ覚えはあるのですが,父は,戦争のことはおろかその理由すら一切話そうとしませんでした。
私が感じることは,徴兵「する側」と「される側」では,その意識は大きく異なるであろうということです。
しかし,自衛隊には職業選択の自由として自ら入隊したのであり,徴兵されたわけではありません。
この違いは大きいと思います。
一国民からすれば,自衛官は,職業として我々の税金から給与が支払われているわけですから,国の命令には従う義務があります。
万が一,日本が戦争に巻き込まれた時,憲法上の解釈はどうあれ,自国民を守るために戦ってもらわなければならない。
その際,「人殺しはしたくない」,「死にたくない」といわれれば,自衛隊は何のために存在していたのかということになってしまう。
冷たいかも知れませんが,自ら入隊したのですから,それが嫌ならばさっさと除隊すればいいと思います。
自衛隊は,景気が悪いから,仕事がないからという基準で入隊するところではないでしょう。
例えそうであったとしても,「戦闘しなければならない」という覚悟を必要とする職業でしょう。
ご家族の方々のお気持ちは察しますが,「軍隊」を選んだ宿命とそこから生じる事態に対する甘さを感じるのは私だけでしょうか。
お断りしておきますが,私は決して安倍政権を擁護する立場からこんなことを書いているわけではありません。
恐らく,これから除隊する方が増えてくるのではないかと思っています。
自衛隊員が不足し,やがては,スイスや韓国のように一定期間徴兵されることもおこり得るのではないか。
これこそ,私が最も怖れることです。
そうなると,父のように「徴兵され」,否が応でも戦闘の最前線に立たされてしまう。
北海道新聞の記事は,自衛隊員のご家族のことですが,ひいては,私達の家族もそうなってしまう可能性を秘めているのではないかと思います。
日本は,そして私達は,「いつか来た道」を歩き,歴史を繰り返すのでしょうか。
(参考)
(1)朝日新聞:自衛官の子持つ父,「違憲」訴え続ける 安保法施行控え
(2)LITERA:佐藤浩市がテレビの右傾化に危機感表明