電力自由化について

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電力が自由化されて1年が経過しました。
みなさんはもう会社を切り替えられましたか。この間,福島原発の廃炉費用を新電力会社にも負担させようという案が政府から出て世間を騒がせました。
遅ればせながら,そもそも「電力自由化」とは何なのかを自分なりに調べてみました。
既に,料金比較などのウェブサイトも多くありますので,今更ながらではありますが,備忘録としてお読み下されば幸いです。

1.自由化とは何か

今までは,電気は「地域独占」の形で供給されており,一般電気事業者(東京電力等)が,
(1)発電事業
(2)送配電事業
(3)小売電気事業
の全てを行っていました。
この地域独占は,「電気の安定供給」の名目で行われ,その代わり「適正な料金」を設定する必要があり,料金の改定は国の認可を必要としていました。
今回,自由化される部分は,(3)の「小売電気事業」となります。
小売電気事業は,経済産業省へ登録手続きを行えば,事業を開始できます。登録に際し,経済産業省がどの様に精査するのかは分かりませんが,恐らく事業の裾野を広げないといけないので,緩いのではないでしょうか。
私の経験では,介護保険の開始当初は,事業所が増えないと,介護保険そのものが始まりませんから,行政の方は,「兎に角,届出があれば,一旦全て受理するように国から言われている」と仰っていました。事業開始にあたって行政の説明会があるのですが,私から見れば,失礼ながら「どうして?」と思わざるを得ない事業所も参加されていました。「介護保険のことを全く知らないのに,自由に参入できるから素人の業者さんが多くて困る」と言われていたのを覚えています。

資源エネルギー庁のウェブサイトを見ますと,既存の電力会社を含めて 276 社が登録されています。ざっと目を通したところ,テレビなどで宣伝している名の通ったところもありますが,知らないところも多くありました。その中には,問合せ先,供給予定地域,一般家庭への販売予定を明記されていない会社も存在しています。

2.電気をどの様に調達するのか

既存の電力会社はさておいて,新規参入事業者は,電気をどの様に調達するのでしょうか。新規参入事業者の中でも,石油会社(昭和シェル・エネオス等),ガス会社は,燃料を販売しているのですから,自社の発電所を持っているのは容易に想像できます。
又,大口需要家に対する電気の販売は自由化されていますので,既に売電事業を行っているでしょう。
問題は,ソフトバンク等の一見電気とは無縁の会社はどうするのでしょうか。
ウェブサイトを調べてみましたが,東京新聞の記事にもあるように,「電源」のことが掲載されていない所が多く見受けられました。
au 電気のウェブサイトでは,関西電力との提携の記事が掲載されていました。
テレビ等で宣伝している以上,問題は無いのでしょうが,気になるところではあります。

3.電気料金はどうやって決めるのか

現在の所,新規参入事業者は,何らかのセット(携帯との組合せ等)を組合わせることで,料金が安くなると宣伝していますが,電気料金をどの様に決定するのでしょうか。そこの所が今ひとつ分からないような気がします。
少し調べた結果,ざっくりとですが,
(1)発電事業者から仕入価格
(2)自社の発電所の供給価格
(3)日本卸電力取引所での電気の仕入価格
(4)託送料金
(5)再生可能エネルギー電気の買取価格
(6)人件費・諸経費等
等の積み上げで決定されると思われます。
(1)~(3)は,電気そのものの調達,(4)の「託送料金」とは,電気を送る際に電力会社が必ず利用する送配電網の利用料金です。既存の電力会社の配電網を使うので,「地域独占」が継続しており,料金は最も高いのが沖縄電力の 9.93 円,最も安いのが北陸電力,関西電力の 7.81 円となっています。(5)は,従来電力会社が買い取っていた再生可能エネルギー電気を小売電気事業者が買い取ることを義務づけられました。
上記の内容からすると,電気料金は本当に安価になるのかとさえ思えてきます。自前の発電所を所有しているのであれば,ある程度は理解できますが,全く電気と無縁な事業者は苦しいのかも知れません。大量の電気を仕入れないと,相手も価格を下げてくれませんから,かなりの数の契約を取る必要があるように思われます。
初めて知ったのですが,「日本卸電力取引所」というのがあるのですね。
日本卸電力取引所は,2003 年の電気事業制度改革の一環で、電力会社や新電力などが出資する私設の取引所として設立,2005 年4月に取引が開始されました。
少し気になったことがあります。
それは,経済産業省の資料によれば,商品先物取引法の一部改正とあり,
「電力先物取引を可能にするため先物取引の対象に「電力」を追加する。」
という一文です。
経済産業省は,取引参加者を小売電気事業者,発電事業者,大口需要家としており,この取引を活発化させる動きを見せています。又,「実際の電力の上場については,現物取引の厚みを見ながら,経済産業大臣が上場の認可の判断を行うことになる」と書かれています。
「上場」とは一体何を意味するのでしょうか。

「安くなるからいいじゃないか」
と思われるかも知れませんが,「小売全面自由化後の需要家保護のための措置」として,「経過措置として一定期間,料金規制を継続する」とあります。ということは,各社の電気料金は,未だ規制下にあり,「電気料金の自由化」ではないことになります。実際に,電気料金の自由化が始まるのは,経過措置が解除されてからとも取れます。その時に,自分が選択した事業者の電気料金がどうなるか気になります。
それでは,諸外国はどうなのでしょうか。
一般財団法人 日本エネルギー経済研究所による「諸外国における電力自由化等による電気料金への影響調査」報告があります。これは,経済産業省の委託事業と思われます。
この報告書の中に参考表 23 というのがあり,調査対象国全ての電気料金が上がっています(上昇要因の燃料費を除く)。内容を精読していないので,期間が分かりませんが,各国とも電気料金が上がっています。面白いのは,日本の電気料金が,-24 %も下がっていること。金額ベースでは,下がったとはいえ日本が最も高いです。
問題は,電気料金は,決して安価なまま推移することはないのではないかという懸念です。それでも,現在の電気料金よりも安価であればいいのですが,そこは「自由化」でどうなるかは不明です。

4.素朴な疑問

既に様々なサイトで掲載されていると思いますが,参考のために記しておきます。
前提条件として,電力計がスマートメーターに置き換わります。これは,送電会社が設置するもので個人負担はありません。特徴は,「通信機能」があるということです。
電力料金の管理は,今まで検針員の方が行っていましたが,通信機能があるので,データが会社に送られます。
(1)電気代を払い忘れたら
スマートメーターの通信機能により,送電会社がスイッチ一つで電気を止めることが可能となります。従って,今までのような「猶予期間」は一切ないと考えておく必要があると思います。
(2)オール電化はどうなる
オール電化は,余剰になってしまう深夜電力を利用することで料金を抑えることを行っていましたが,今後は不明のようです。明確に,オール電化は高くなる可能性があると明記している会社もあります。
(3)引っ越しが面倒になる
結論から言えば,「先に契約しておくこと」になります。又,電気が点くまで3日くらいかかると言われていますので,4月以降引っ越しを予定している方や急な転勤で広域に異動される場合,転勤先が契約会社のサービス地域外ですと,新たなサービス会社を決めなければなりませんので,時間を要します。最悪の場合,転居しても電気が来ないケースもあるかも知れません。
又,契約期間に縛りがある場合,「解約」となり,違約金の支払いが生じる可能性もあります。転勤は,会社の命令ですので,その場合は例外となるか否かも確認しておいた方が無難でしょう。
(4)マンション住まいの場合
個別に電力計がある場合は,問題はありませんが,マンション一括受電の場合は難しそうです。

以上,経済産業省の資料にもあたりながら,記してきましたが,まだまだ不透明な要素も多いと考えられますので,充分吟味してから切り換えるのが賢明かと思います。

バラ色の夢から入らずに,先ずは足元をすくわれないように地固めをしたいものです。

(参考)
(1)エネチェンジ:電力自由化後の託送料金が決定!新電力の電気はどうなる?
(2)日経テクノロジー:卸電力取引所とは
(3)資源エネルギー庁:電気事業法等の一部を改正する法律について(概要)
(4)JEPX:一般社団法人 日本卸電力取引所
(5)スマートグリッド.net:スマートメーターの仕組みとメリットデメリット
(6)経済産業省:スマートメーターの導入促進に伴う課題と対応について(PDF)
(7)エネチェンジ:元東京電力・執行役員がわかりやすく解説!知らなきゃ損する電力自由化
(8)ダイヤモンドオンライン:欧米諸国の先行例を改めて吟味する 電力全面自由化はやはり愚策だ
(9)経済産業省:諸外国における電力自由化等による電気料金への影響調査(PDF)

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