東京新聞によると,
「政府は21日,共謀罪の構成要件を変えた組織犯罪処罰法改正案を閣議決定した。今国会に提出する。成立すれば広範な犯罪を計画段階で処罰できるようになり,実行後の処罰を原則としてきた日本の刑法体系は大きく変わる。捜査機関の恣意的な運用や市民団体への適用を懸念する声も根強く,国会では与野党の激しい論戦が予想される。」
と報道している。
記事にもあるように今までの刑法は実行後の処罰を原則にしてきた。
しかし,今後は,計画段階で処罰できる。
政府は,専らテロリズム集団に対する予防措置を強調しているが,条文には「その他の組織的犯罪集団」という表現もあり,「組織的犯罪集団」については,恣意的に運用される畏れを否定できない。
政府は,法案が通過するまでは,国民に不安を与えない答弁を繰り返す。
そして,通過後は,その解釈をどんどん拡大し,人々を萎縮させる方向に向かわせる。
即ち,これは国家権力の無限大の適用の可能性を秘めている。
旧ソ連がそうであったように,反権力の内容を話していただけでも,それを密告され,監視対象となり,逮捕されることも出てくるだろう。
「通報」という言葉を用い,市民にそれを奨励する。
私のように平均余命があと15年あるかないかの人間には,最早「共謀」するエネルギーなどは残っていないし,ましてや片田舎に住んでいては,共謀する相手もいない。
しかし,若い人達にとっては,自分の未来が大きく変わってしまう可能性がある。
自由にものを言うことも憚られる社会になってしまう。ましてや,それを密告されるとあっては,最早誰をも信用できなくなる。
国家権力にとっては,人を分断してしまうことが組織犯罪の予防になる。
社会に出てまともに働いた経験のない者が,政治家となり,その権力をおもちゃにしている(政治家は世襲制ではないだろう)。
そのおもちゃを取り上げようとする者は,最早存在せず,巧みに利用する者達の集団が,日本の未来を決めようとしている。
カウンターパートとしての野党には,日本についてのヴィジョンがなく,その抑止力とはなり得ない。
一部の知識人グループが声明を出すが,マスコミはそれを報じず,論陣をはろうともしない。
まるで,第2次世界大戦中の大本営発表と同じだ。いやそれ以下かも知れない(大本営発表すらしてくれない)。
繰り返すが,若い人達は,自分の未来をどうしたいのかを真剣に考えた方がいい。
「どうせ変わらないのだから」という言い訳を続けていれば,事態は益々悪くなり,気がついた時には,がんじがらめにされてしまっている。
若者は,そんな状態になってしまった社会で人生を送りたいのだろうか。
「1984」の世界を招いてはならないと私は思う。