3月23日に行われることが正式決定した証人喚問について,前回の記事と重複することをご勘弁願って,もう少し記してみたい。
証人喚問については,「議院証言法により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたとき」は「3月以上10年以下の懲役に処する(議院証言法第6条第1項)」とある。
そして,委員会は,証人が虚偽の陳述をしたと認めたときは,議院証言法第8条の規定に従って告発の手続に入るが,「偽証罪などの議院証言法違反の告発には出席委員の3分の2以上の賛成が必要」である。
又,「証人又はその親族等が刑事訴追を受け,又は有罪判決を受けるおそれのあるときには証言等を拒むことができる。」
以上が証人喚問の概要である。
何故自民党は,証人喚問の決定を下したか
自民党は,籠池氏の「安倍首相からの寄付」発言が,「総理への侮辱」だとして参考人招致の慎重姿勢から急転直下,証人喚問を行うと表明した。
この発言を看過してしまうと,政権の信頼性を揺らがしかねないからということだと思う。
それと,これ以上籠池氏に言いたい放題言わせないためには,法的罰則(偽証罪)にも問える証人喚問しかないと考えたのであろう。
これは,籠池氏に対する自民党の脅しともとれる。
籠池氏の勝算
果たして籠池氏には勝算があるのだろうか。
現時点では,「限りなく黒い灰色」に持ち込めればいいと考えているのではないか。
安倍首相からの寄付の件
籠池氏側の事実は,2015年9月5日,昭恵夫人が講演会に来られた際に「安倍晋三」からと頂いたもので,「領収書は結構です」と言われ,9月7日に郵便局で振り込んだというもの。
証拠物件としては,毎日新聞にあるように,「小学校建設寄付用の「払込取扱票」の受領証」を示している。
松井知事は,記者会見で,大阪府に提出された寄付名簿には記載がなかったと述べているが,それは2014年までのものであることに注意する必要がある。
又,故意に掲載しなかった可能性もあるので,この発言を完全には信用できない(こういうミスリードには注意)。
一方,安倍サイドは,「本人も昭恵夫人も事務所も一切その様な事実はない」と述べている。
籠池氏の今までの発言もあって,周りの印象は圧倒的に安倍サイドに有利である。
しかし,安倍サイドは証拠物件を何も示していない。
通例は,受け取った側がその証明をするのかも知れないが,事実が2つある以上,安倍サイドも何らかの証拠物件(第三者の証言ではない)を示す必要に迫られる場合も出てくるのではないか。
私が,籠池氏だったら,下記のように述べる。
「私どもが示した事実に対して,事実無根であると言われるのであれば,私どもに反する事実を物的証拠をもとに示して頂きたい」
上に「第三者の証言ではない」と書いたのは,随行員の証言を持ち出す可能性があるからである。
即ち,塚本幼稚園を訪れてから帰るまで,一刻も随行員の前から姿を消した時間はない,と証言させる。
これは,安倍サイドの大きな反証である。
籠池氏は,これを突き破れるか。
通常は,講演会にお越しになれば,それらしき部屋にお通しし,お茶の一つも出すだろう。
その際も随行員は同席していたかどうか。随行していなかったとすれば,その時間に手渡した可能性を否定できなくなる。又,謝礼を渡す際はどうか。
籠池氏は,2015年9月5日の事実をどれだけ緻密に再現できるかどうかにかかっているように思う。
いずれにせよ,お互いにもつそれぞれの事実を撤回することはあり得ないだろうから,平行線で終わり,偽証罪の告発までは至らないように思う。
証人喚問の冒頭に,証人は「良心に従って真実を述べ何事も隠さず,また,何事も付け加えないことを誓います」と宣誓するようであるが,所詮自分が持っている真実である。名探偵コナン君のように「真実はいつも一つ」ではない。
稲田防衛大臣も言っているではないか。
「誤った記憶に基づいて証言したことは虚偽にあたらない」と。
もし,偽証罪に問うならば,稲田防衛大臣の発言も,証拠物件を提示されたのであるから偽証罪として告発されねばならない。
昭恵夫人が名誉校長に就任したいきさつについて
与野党が質問するかどうか不明だが,私ならば,安倍首相の国会答弁と明らかに食い違いがあり,反証に足る事実がある場合,この場で発言する。
国会答弁に反論することにより,答弁が誤りであると一矢を報いることが出来る(猛烈に反論してくるだろうが)。
この件については,「限りなく黒に近い」が偽証罪として告発するには無理があるという結論を引き出せれば,籠池氏の勝利と言えるだろう。
3種類の工事請負契約書の存在について
これについては,前回の記事以来ずっと考えているのだが,妙案は思い浮かんでいない。
大阪府が,偽計業務妨害罪で告発を検討しているという。
そこで,
「大阪府も偽計業務妨害罪で告発を検討しているようであり,刑事訴追を受ける可能性がある。又,有罪の判決の畏れがあるので」
という理由で証言を拒否する。
多弁を弄すれば弄するほど底なし沼にはまっていくので多くは語らない。
契約日が異なり,契約相手も異なれば,どんな詭弁も考えつくのだが,契約日も契約相手も同一では,どうしてもひねり出せない。
籠池氏はこの質問に何と証言するか。
政治家への依頼(口利き)の有無
「政治家に依頼したことはない」
これにつきるだろう。
すると,鴻池議員事務所の面会記録の内容について質してくる可能性があり,その場合,
「鴻池議員事務所に「相談」に行ったのは事実である」
と述べる。
事実,鴻池議員も記者会見で,面会記録の内容については否定していない。
「近畿財務局や大阪航空局に相談内容をどの様に言われたかは承知していない」
と証言し,説明責任は鴻池議員側にあるとする。
又,
「大阪府の認可について,議員に会って何かを依頼したことはないか」
と問われた場合,行った事実があれば
「○○府議や○○市議にお会いしました」
と証言し,具体的内容について質問された場合,
「内容は何々ですが,あくまで相談であり依頼ではありません」
とこちらの意図を明確にしておき,後は議員がどうしたかは本人の説明を待てばよい。
名前を出された議員は,否認若しくは認めても「相談を受けただけで行動していない」と回答するだろう。
地元民にしてみれば,名前が出た議員についてはよく知っているだろうし,イメージが悪くなる可能性がある。
弁護士を通じて,左川理財局長に「10日間雲隠れしてくれ」と言われた件
マスコミに,顧問弁護士が「完全否定」し,顧問を辞任するファックスを送っている。
これは,官僚もそんな依頼を行うとは思えないし,顧問弁護士の事実が正確だと思える。
とするならば,「私の完全な記憶違いであった」と逃げるしかない。
兎に角,それ以上突っ込まれない答弁に終始する必要がある。
大阪府の認可や国有地払い下げがスムースにいったと思われる件
これは,直接籠池氏にぶつける内容ではない。
何故ならば,前にも述べたように籠池氏にはどうにも出来ないことだから。
「私はあくまで役所の指示に従ったまでで,早いか遅いかは分からない」
と証言し,忖度があったか否かは担当者に聞いてもらいたいという態度をとる。
この様な場では,いくら過激な内容や物言いで質問をぶつけられても,言葉を慎重に選び,最小限必要なことだけを証言する必要がある。
「安倍首相からの寄付の件」に対してのウルトラCとしては,
「名誉校長に就任していただいた御礼をお渡ししようとしたところ,ご辞退されたので,小学校開設の寄付とさせていただくことを了解して頂いた。その際,領収書も辞退されたのでお出ししていない」
というもの。
これであれば,その場のやりとりであるから,首相も事務所も関与していない(関与できない)のは当然である。
まるで自作自演のような内容であるが,私はあり得ると思う。100万円は大金であるが,名誉校長就任は安倍首相も了解されているのであれば(通例はそのように考えるだろう),昭恵夫人に対する御礼ではなく,一国の総理である安倍晋三に対する御礼としては高いわけではないだろう(鴻池議員のコンニャクも,自分に対する評価はこの程度かと思って突き返したとも考えられる)。
又,法人から支出すれば,帳簿に記載せざるを得ないから,理事長のポケットマネーから出したと言えばよい。
それとも,これはデヴィ夫人の寄付の誤りでしたとでも訂正しますか(日付けは不明だけどね)。
さて,3月23日は一体どうなるのだろうか。