証人喚問で残された問題【森友学園問題 12】

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23日の証人喚問の平均視聴率は16.1%だったという(zakzak)。
この数字は,国民の関心が如何に高いかを示していると言えよう。

誤解を怖れずに言うならば,籠池氏は「悪」である。
但し,それよりもひどい「巨悪」が存在することを暴露されてしまい,おまけに,彼に「真相を究明しろ」と公の場で突きつけられてしまった。
さて,証人喚問で籠池氏が証言した問題点を整理してみよう。

昭恵夫人の秘書官のファックスに対しては,夫人が全く関与していないことを証明できるのか

森友学園問題が惹起されるまでは,国民の多くは安倍首相を始めとする政府・与党にそれなりの信頼をおいていたに相違ない。
しかし,24日の予算委員会で首相が「関与していない」と答弁していたが,国民は,今更否定されても信じないだろう。
逆に,首相も政府・自民党も,むきになって籠池氏を誹謗中傷したり,関与を否定したりすればするほど疑惑は濃くなっていくばかりだ。
おまけに,昭恵夫人の証人喚問を拒否するなど,自滅の道をひた走っているといっていいのではないか。
この一連の発言・行動は,「証明できない」ことを暗に示してしまっていることに,首相や政府・自民党は何故気づかないのか。

国有地払い下げ交渉の過程で「神風」が吹いたのか

あくまで,籠池氏ご本人の感覚であり,今のところ何の証拠もない。
ただ,多くの国民は同じように感じているのは事実であろう。

ここで登場するのが,昭恵夫人の秘書官の動きである。
谷氏は,1998年当時の通産省入省,2013年から3年間夫人付秘書官となっている。
私は,もっと若い方の予想をしていたが,キャリア15年以上の方とすれば,同期入省の方もそれなりの地位にあるに違いないし,「昭恵夫人にも報告済」との文言にもあるように,受け手の財務省の官僚も,問合せに来られた時の谷氏の職責は承知できたと思われる。
そうであるならば,最早これは官僚同士の中であうんの呼吸が働く要素をあったことを否定できない。

このワイドショーの中で,コメンテーターの田崎氏は,官邸サイドと同じ見解,即ち,
「籠池氏が直接谷氏とやりとりしていたのであって,昭恵夫人は介在していない」
と述べていたが,元文部官僚の寺脇氏が,「一個人の陳情を受け付けることはない」と言明し,田崎氏を論破してしまっている。
又,秘書官の立場を明確に説明されている。

私の経験からいっても,議員本人との面会では詳細なことはお話ししない。
後は,秘書を通じてやってくれ,となる(鴻池議員の面会記録)。現に,私も何回かファックスのやりとりを行い,問題のファックスにあるような「○○省××係官の所へ確認に行った」という文言がある。

官僚は,訪れた秘書の名刺を見れば,すぐに「○○議員案件」と了解(少なくとも気がつく)するだろう。
だから,元官僚に聞けば,全ての人が「忖度は当たり前だった」と回答するのだ。

上述にあるような「介在していない」と解釈するのではなく,「直接介在する必要はない」のである。それは寺脇氏の説明でも明らかである。
安倍首相や政府・自民党の発言を注意深く聞けば,何ら明確な説明をしないまま,ひたすら否定だけをしていることが分かる(説明責任を果たしていない)。

多くの国民は,このような構造を知らないからコメンテーターの発言を鵜呑みにしてしまう。
だが,ここまで構造がつまびらかになってしまうと,昭恵夫人に悪意はなかったとしても,「直接・間接を問わず全くの関与はない」といえないのではないか。
この様な問題を検証する際に注意しておかなければならないのは,森友学園問題が発覚していない当時は,昭恵夫人は学園の教育方針に賛同し,だからこそ,「名誉校長」を引き受けた。
「何とかして欲しい」と相談を受ければ,「何とかしてあげたい」と考えるのが普通だろう。
だから,いくらフェイスブックで否定しようとも,国民は信用しなくなってしまうのである。

籠池氏も外国特派員協会で,このファックスの件以来風向きが変わったと述べている。
この発言は,証人喚問の証言の曖昧さを補強している。
もうひとつ籠池氏が神風を吹かせたと思われるのは,証人喚問での「近畿財務局で安倍昭恵夫人の名誉校長の話をした」という下りである。
この話の影響は大きいと言わざるを得ない。

24日の予算委員会での当時の理財局長や近畿財務局長の答弁は予想通りであった。
官僚は巧みに証拠物件を廃棄し,最早,誰も真相を明かそうとすることはないだろう。

松井知事も「首相は忖度あったと認めるべきだ」と述べている。
安倍首相を始めとする政治家の答弁は,「否定」の断定ばかりで全く論理性がない。
おまけに窮地追い込まれると感情的な反応をしてしまう。悪いけれど,こんな答弁は子供でも出来るよ。

大阪府の許認可の不可思議さ

籠池氏は証人喚問で,はしごを外された政治家の名前を何名か出したが,その中でも「松井知事」の名前を2回述べている。
何故,ここまで松井知事に執着するのだろうかとの疑問が湧く。
核心は,籠池氏が証人喚問で述べた,「認可適当は大きな担保である」ということに尽きると思う。

つまり,私学審であれほど財務状況に問題があると言われながらも,「条件つき認可適当」を出した大阪府の当時の最高責任者は松井知事であった(当時はまだ教育長に委任されていない)。
籠池氏にしてみれば,ここまでかなりの資本を投下しており,今後の支払も残っている。
最終的には,「認可申請取り下げ」を行ったが,金銭的な問題が大きくのしかかってくる(最早小学校を開設して資金の回収は不可能になった)。

3月10日のメディアとの記者会見で,籠池氏は「再チャレンジしたい」と述べている。
以前の記事でも記したように,「取り下げ」にペナルティはないから,この問題が一応の収束をみれば,籠池氏は「再挑戦」を考えており,大阪府はそれを拒否するとまでは考えていなかったのではないか。
即ち,私学審で何とか「認可適当」を出させるから,その代わりに何らかの条件を出され,籠池氏はそれを飲んだにもかかわらず,風向きが変わると,「元々認可条件に合わない(虚偽の)申請を行った」という出発点まで戻してしまうような論法を使って,「開校延期はやむなし」と覚悟していた目算までつぶしてしまった。

しかし,籠池氏の弱点は,何といっても「3つの工事請負契約書の存在」である(唯一証人喚問で証言を拒否した)。
実際の工事請負金額といわれる15億5500万円を使って再計算すれば,大阪府としても「認可適当」の理屈をひねり出せないじゃないかということ。
さすれば,上記のように「元々不可能な計画」と言わざるを得なくなる。
だから,松井知事はツイッターで「逆恨みするな」とコメントしたのかも知れない。

この弱点さえなければ,今回の騒動について,籠池氏は正面突破できた。
籠池氏は,縦割り行政の弱点を上手く突いたのだが,問題の発覚によって,それが自らの弱点になってしまった(最低限異なる金額の説明がつくようにしていなかった)。

では,松井知事との取引はあったのだろうか。
うがった見方をすれば,この事業に関係している施工業者等の素性を洗い出せば,何かが見えてくるかも知れない。
私も,新規事業で建物を建てる際には,色んなコネクションからアプローチがあった。
地元自治会との交渉で,ある業者名を出され,その業者を使えば認めてやると言われたこともある。

もっと露骨な例を挙げれば,一度は大手の建築業者と契約寸前までいったのに,ある議員の介入でそれをつぶされてしまい,議員の息のかかった業者(親族が経営)にせざるを得なかった経験もある。
支援者に頼まれれば,「推薦」という形での口利きもあったかも知れない。それを籠池氏が斟酌したとすればどうか。

藤原工業にもおかしな所がある。通常,いくら頼まれても(覚え書きにもある通り目的も分かっていて),工事請負契約書を2通作成することは行わないだろう。では,何故詐欺の幇助となる危険性を犯してまで,そこまでしたのか。
15億円の受注は大きいに違いないが,頼まれたからというものではなく,これは企業のコンプライアンスの問題である。

大阪府の(松井知事周辺に)何らかの「闇」があるのではないかと邪推してしまう。
一方,松井知事の立場に立てば,「国有地払い下げの問題」をかぎつけられたからこんな大騒ぎになったのであって,火元は大阪府ではないという思いは理解できる。
だからこそ,途中から松井知事は,「国はえらい親切やなと思った」とコメントし,暗に国側に問題があることを強調しようとした。

大阪府議会は,自民党が提案した「百条委員会」を維新・公明の反対で否決している(毎日新聞)。
維新の会の下地議員は,証人喚問であれほど籠池氏を非難し,又,松井知事も百条委員会に賛成していたのに,府議会での百条委員会は否決するのね。
それとも,松井知事は表で賛成しておきながら,裏では反対工作をしていたのか。

表向きは,私学審の「認可適当」の問題であるが,その裏に潜む闇を解明してこそ,この問題の本質が見えてくるのではないか。

3つの工事請負契約書の存在

籠池氏が,唯一証人喚問で拒否した内容である。
拒否するのは,刑事訴追を覚悟しているとも解釈できる。
私は,専門家ではないのでよく分からないが,詐欺罪としての立件は可能だろうか。
大阪府は偽計業務妨害で告発を考えており,国交省は補助金適正化法違反で告発するのではないかといわれている。

ただ,大阪府も国も二の足を踏むのではないか思うのは,籠池氏を司直の手にかけた場合,もっと深い闇が出てくるのではないかという懸念である。
推測されるのは,下記の3点が考えられる。

(1)国有地払い下げのプロセスを明らかにしていった場合,官僚が法律違反に問われる可能性がある
(2)上記(3)でも記した大阪府の闇がもっと明らかにされてしまい,関係者が罪に問われる可能性がある
(3)昭恵夫人の関与等を曖昧にしたまま刑事訴追すれば,籠池氏を口封じする明らかな「国策捜査」と国民の目にはうつり,政権には今まで以上に大きなダメージになる。

籠池氏には最も弱みであるが,反面,これを追求することにより,今まで影に隠れていたことまで公になってしまう可能性を秘めている。
タイミングとしては,上記1から3が完全にクリーンになったとはいわないまでも,概ね国民がしぶしぶ了解する雰囲気が出てきた時ではないか。

安倍首相から寄付はあったのか

これは,籠池氏からは9月5日の経過に伴う「振込票」が提示され,経過の陳述も詳細であり,安倍サイドからは,「寄付は行っていない」と否定するものの,その証拠を提示できない。
唯一の反証は,既出の通り「秘書は席を外していない」という証言であるが,状況証拠にすぎない。

何回も書いているが,こんなことは当事者だけの場で行われることであり,あとのことを考えれば,お互いに証拠になるようなものは何も残さないのが通例である(匿名を条件に寄付行為を行う場合を想定すれば,簡単である)。
これは,あくまで平行線で終始するしかない。

安倍首相も2015年9月時点では,学園の教育方針を評価していたのだろうから,今問題になったからといって,急に態度を翻す必要はないのだ。
自分を2015年9月時点においた受け答えをすればいいのに,世間に悪く思われたくないという感情を入れるから答弁がおかしくなるのである。

極論すれば,2015年9月時点での森友学園を評価していたので,夫人を名誉校長にして頂いたこともあり,100万円寄付したといえばよい。
稲田防衛大臣も同じだが,全ては,今を基準にして,当時の行動についてあとづけの理屈を探そうとするから苦しくなるのである。
双方とも合法なのだから,これ以上お互いの主張を繰り返すことに意味はない。

本日,安倍首相は人間ドックを受診している(産経新聞)。
いよいよ第1次政権と同じ状況が到来するか。

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