証人喚問の結果 【森友学園問題 10】

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先ほど(3月23日),籠池氏に対する衆議院の証人喚問が終了した。
午前,午後とも NHK の放送で見ていたが,その印象を記してみたい。

真相は究明されたか

籠池氏1名では真相究明にはほど遠いと言わざるを得ないだろう。
読売新聞が,「国税庁長官ら2氏参考人招致へ」と報じているが,籠池氏には法的縛りのある証人喚問を行っておきながら,片方は偽証しても法的責任を問われない参考人招致というのは片手落ちであろう。

主たる質問事項について

「証人喚問の勝算」の記事で,幾つか予想しておいたが,それを検証しながら記してみる。

安倍首相からの寄付の件

やはり,私が予想したとおり,昭恵夫人が人ばらいをされて,2人になる時間が存在し,その際に頂いたと籠池氏は陳述している。
一方では,2名の付き人があったが,その様な時間はなかったとのことである。
そして,お帰りの際に,「感謝」と記して,10万円をお渡ししたと述べている。
安倍首相は,かねてから,「受け取るような事実はない」との主旨の国会答弁をされていたと思うが,事実がくい違っている。
これは,概ね報道されている内容の通りの答弁で,予想通り,双方の主張は平行線のままであった。

昭恵夫人とのメールのやりとり

これは,双方が結構やりとりしているのには驚かされた。
双方が,明らかにしてもよいと同意しているので,やがては明らかになるだろうが,果たしてその全てが公開されるだろうか。どちらも恣意的に行うのであれば,これも真相は藪の中になってしまうと思われる。
メールのやりとりが産経新聞で報道された。

「安倍晋三記念小学校」と書いた振込用紙の件

籠池氏は「ほんの一瞬使用しただけ」と述べていたが,午後の質問で,首相就任後も使用していた事実が明らかになった。
今後どの様な波紋を呼ぶのかは,現時点で想像がつかないが,安倍サイドから「名誉毀損」で訴えられる可能性を残したのではないか。

振込用紙は,平成26年3月に印刷したが,昭恵夫人から使用不可とのとだったので止めた。
既に送付済のものもあり,そこから異なるところへ送られることもあったので,結果的に拡散した。又,幼稚園あったものを使用した可能性もある(外国特派員協会の質疑応答)。

3種類の工事請負契約書の存在について

これは,全く私の予想通りであった(証言拒否)。
午後の質問では,設計士の指導と述べていた。
又,質問者からは,複数の契約書を作成する目的が明記された藤原工業との覚え書きの存在も明らかにされた。
この覚え書きは,15億5500万円と7億5000万円についてのことであって,国交省への提出資料は,実施設計見積とちらり(問わず語りと言おうか)と述べている。
やはり,籠池氏側も合理的な説明がつかないようである。

政治家への依頼(口利き)の有無

色々な政治家に接触している事実が明らかになり,具体的な議員名も出てきた。
その多くは維新の会であったので,午後最後の質問に立った維新の会の下地議員は,顔を紅潮させ,かなりきつい口調であった。
政治家の関与について,「はしごを外されたと思うのは誰か」との質問に,「松井一郎知事」と明確に述べている。

この下りは,当初は,同知事と話が完全に出来上がっていたのではないかと邪推させる。他にも維新の会の議員名が登場すれば尚更である。
特に,畠代議士を通じて松井知事の父とも親しかったと考えられ,又,維新の会設立に際し,何らかの尽力をしたのではないかと推測される。
それだけに,信頼していたにもかかわらず,態度の変化に腹を据えかねたのではないか。
外国特派員協会の質疑応答で,認可をつぶしたのは維新の会だと明確に述べている。

実際,松井知事にも,安倍首相と同様に言説の変化が見て取れ,ヤバイので逃げにかかっているのではないかとの疑念を抱かせてしまう。
うがった見方をすれば,大阪府の認可については,維新の会メンバーが寄ってたかって関与していたのではないかと思わされてしまう。
維新の会の下地議員が,「松井知事がはしごをかけてやったのに,落ちたのは自分自身だ」という発言をしていたが,これでは,まるで「松井知事の関与があった」ことを自白したようなものだ。

ここで,大阪府の認可に対する見解の変節にも一言言っておきたい。
当初は,「土地の取得見込でも問題ない」という論調であったのが,「土地は取得済でないといけない」と変化しており,あたかも,当初から籠池氏が違法な申請をしていたかのような印象を与えようとしている。
もし,そうならば,私学課は申請を受理すべきではなく,ましてや,審議会に諮るなどは言語道断であろう。
自らの身が危うくなると,相手方に責任を押しつけるような姿勢は,行政の信頼を益々失わせるだけである。

今日の中で新しく出てきたのが,昭恵夫人再度とのファックスでのやりとりである。
これは,マスコミに流れているようなので,直にネットでも見られるようになるだろう(ハフィントンポスト)が,昭恵夫人が,まるで安倍首相の代理のような行動を取っていることである(籠池氏は,「政治的」と表現している)。

私も,新規事業で国会議員にお願いに行ったことがあるが,主なやりとりは秘書と行っていた(そんなことは国会議員ならば百も承知の筈だ)。
ましてや,昭恵夫人の秘書は公務員である。
到底一個人の要求を受け付ける訳はないし,財務省の担当者に話を聞いて報告するなどあり得ない。
官邸サイドは,その官僚と籠池氏との個人的なやりとりというように矮小化しようとしているようであるが,そんなことをすればするほど,周りから疑念を抱かれるだけだ。私には,政府サイドの答弁や国会議員の反応は見苦しいとしか見えない。

官僚サイドからすると,昭恵夫人の代理の方が来られた場合でも,どうしても背後の安倍首相の姿を思い浮かべるだろう。
この1回のやりとりでも,官僚側からすれば,「安倍案件」と考えるのには充分であろう。
従って,安倍首相が,「印籠の役割を果たすことは決してない」と断言していた見解とは異なっている。
私は,寄付の件よりは,こちらの方が重大なことではないかと思う。

籠池氏は,議員の名前も出さずに,ソフトな答弁に終始するかと思っていたが,実際はガチンコ勝負を覚悟したような印象を持った。

弁護士を通じて,左川理財局長に「10日間雲隠れしてくれ」と言われた件

当初は,籠池氏は左川理財局長と述べていたが,今日は課長補佐の名前を挙げていた。
これについては,どの議員も突っ込んだ質問をしなかったように思う。

国有地払い下げがスムースにいったと思われる件

当初は,困難が予想されていたが,途中からスピードアップした(神風が吹いた)とご本人が述べており,外国特派員協会の場でも,前述のファックスの件から風の流れが変わったと感じたと言及している。
具体的な交渉は代理の弁護士が行っていたようで,払い下げ価格が安くなったいきさつの全てを承知している訳ではないようであった。
売買価格が非公示になった件については,財務省から問合せがあり,そのようなニュアンスの回答をしている(朝日新聞の記事になってからあわてて開示している)。
この件については,当時の役人を参考人招致するようである。
野党の質問者の多くが,関係者に問いただす必要があると強調していた。

財務状況が悪かったのではないか

参議院の冒頭で自民党の西田議員が,元々財務状況がよくないにも関わらず,認可申請したのではないかと質問していたが,私に言わせれば,そうであるならば,私学審が認めなければよいだけのことである(私だったらそう答弁する)。
工事費の支払いが滞っている原因もそこに求めているが,どこまでの資料を手に入れてそのような事を言っているのか分からないが,私には,言い過ぎのような気がした。

全般的に,落ち着いた答弁で,議員に対しても反論する場面もあり,テレビで散々報道された扇情的な様子はなかった。
籠池氏にとっては,衆参両議院の証人喚問が同日に行われたことは,有利に働いたのではないかと思われる。別の日になれば,1日目の内容を吟味された上で,更なる追求が行われると予想された。
安倍首相は,「私も妻も関与していたら,総理も国会議員もやめる」と豪語していたが,ファックスの件は昭恵夫人の関与が明らかであり,一体どの様に落とし前をつけるのだろうか。

官邸サイドは,「ゼロ回答だから問題はない」としているが,通常,経産省の官僚が財務省の担当者の回答を代弁することはあり得ないだろう。
これは,どう考えても昭恵夫人の代理行為である。

ファックスの件で可哀想なのは,当時の夫人付の官僚である。
ファックスの文面を読む限り,誠意ある対応をされている。「勝手にやった」などと弱い者をスケープゴートにすることはやめて頂きたいと思う。
昭恵夫人がフェイスブックにコメントしている(産経新聞)が,私は,この様な重大なことに SNS を使用して軽々しく発言するのは反対である。

官邸や名指しされた議員も火消しに躍起になっているが,所詮は一方の見解である。
弱い者を召喚するくせに,自分たちは,法的責任を問われない場所で発言し続けるのはいただけない(卑怯といってもいい)。
今度は,関係者を一堂に集めて,証人喚問しなければフェアではないだろう。

今回の証人喚問は,政府・自民党の思惑通りにはいかなかったのではないか。
偽証罪に問われるかもしれないと,脅しをかけていた質問者もいたが,悪いけれど,そんなことは,既に覚悟をしている人間には痛くもかゆくもない。
その意味では,籠池氏という人物を過小評価していた政府・自民党の誤算である。

籠池氏は,「真相を追求してくれ」と国会に迫っている。国政サイドは,この言葉をどう受け止めるのか。
政府・自民党が,いつまでも昭恵夫人の証人喚問に応じないようであれば,国民の信頼は薄れていくだろう。
いつまでも,脳天気に安倍首相の発言は正しいなどと騙されるほど国民はバカではないだろう(そう思いたい)。

演説で,いくら美辞麗句を並べ立てても,出てくる結果の見苦しさを思えば,我々は詐欺に遭っているとも言えるのではないか。
外国のメディアはこの国の異常に気づいているのに,国民がいつまでも気づかないようであれば,日本のガラパゴス化は益々ひどくなっていくと思わざるを得ない。

最後に,若い人達に言っておくけど,あなた方は日本をひいては自分の身をこんな人達に預けてもいいの。

(参考)
(1)朝日新聞:籠池氏の喚問終了「近畿財務局長に言葉がけして頂いた」
(2)産経新聞:元検事の民進・小川敏夫参院会長、籠池氏の証言に一定の信憑性「証言通りなら首相の国会議員辞職にあたるのではないか」
(3)産経新聞:籠池泰典氏証人喚問 詳報(1)
(4)産経新聞:籠池泰典氏証人喚問 詳報(2)
(5)産経新聞:籠池泰典氏証人喚問 詳報(3)
(6)産経新聞:籠池泰典氏証人喚問 詳報(4)
(7)産経新聞:籠池泰典氏証人喚問 詳報(5)
(8)産経新聞:籠池泰典氏証人喚問 詳報(6)
(9)産経新聞:籠池泰典氏証人喚問 詳報(7)
(10)産経新聞:籠池泰典氏証人喚問 詳報(8)
(11)産経新聞:籠池泰典氏証人喚問 詳報(9)
(12)産経新聞:籠池泰典氏証人喚問 詳報(10)
(13)産経新聞:籠池泰典氏証人喚問 詳報(11)
(14)産経新聞:籠池泰典氏証人喚問 詳報(12)
(15)産経新聞:籠池泰典氏証人喚問 詳報(13)
(16)産経新聞:籠池泰典氏証人喚問 詳報(14)
(17)産経新聞:籠池泰典氏証人喚問 詳報(15)
(18)産経新聞:籠池泰典氏証人喚問 詳報(16)
(19)産経新聞:籠池泰典氏証人喚問 詳報(17)
(20)産経新聞:籠池泰典氏証人喚問 詳報(18)
(21)産経新聞:認可適当判断は「異例」
(22)産経新聞:「正規15億、別途7億」覚書
(23)産経新聞:国有地売却,豊中市議ら背任罪で財務局職員を告発
(24)J-CAST ニュース:首相夫人「付き人」ファクスの破壊力 財務省への「問い合わせ」は「口利き」ではないのか?
(25)時事通信:認可答申あれば土地売却=「森友」で近畿財務局が確約-大阪府私学審会長
(26)ハフィントンポスト:籠池氏が安倍昭恵夫人側から受け取ったFAX全文を公表

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