連日ワイドショーを賑わしている森友学園問題。
当初は,国会で野党から安倍首相の関与が取りざたされて,ご本人は気色ばんで否定されていました。
見苦しいくらいに田崎 史郎等の安部シンパが火消しにやっきとなっています。
時系列については,このウェブサイトに詳しい(資料も豊富)。
下記に関係人物等を挙げてみました。
<主な登場人物>
(1)安倍 晋三 首相
(2)安倍 昭恵 首相夫人
(3)籠池 泰典 学校法人「森友学園」理事長
(4)鴻池 祥肇 参議院議員
(5)中川 隆弘 大阪府議(大阪維新の会)
(6)黒川 治 兵庫県議
(7)松井 一郎 大阪府知事
<官庁>
(1)財務省 近畿財務局
(2)国土交通省 大阪航空局
(3)大阪府私立学校審議会(私学審)
<団体>
(1)日本会議
(2)日本会議国会議員懇談会
(3)神道政治連盟国会議員懇談会
(4)みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会
(5)日本青年協議会
ここ毎日,新聞各紙の電子版をフォローしているが,その論調に特色があって面白い。
又,ワイドショーのコメンテーターの発言も,最早,「あんた何言ってんの」というレベルもあり,司会者もしかり。
鴻池 祥肇参議院議員事務所の面会記録まで出てきて,ご本人も記者会見する始末。
自分の経験からすると,議員秘書が関係機関の担当者に電話するくらいは当たり前。
ただし,「何とかしてやれ」とは決して言わない(若しくはもっと巧みな言い回しをする)。
その電話の意をくみ取るのは,役所の担当者です。
又,役所に出向いた際には,お互いに議員名はおろかその関係のことは一切出さないのが不文律。
籠池 泰典理事長が,役所で「天の声」について言及したのであれば,そのルールを知らないとしか思えません。
役人にしてみれば,もう「おまえなぁ」状態でしょう。
マスコミが連日報道し,ネガティブなことをほじくり始められたら,これはもう我が身を守る(議員は選挙に,官僚は出世に響く)ために切り捨てるしかありません。
問題点を整理してみると,以下のようになるでしょう。
1.安倍 昭恵首相夫人が名誉校長に就任することの効果
2.国有地が格安で払い下げられた経緯
3.大阪府私立学校審議会の認可
4.虚偽とも取れる報告
(イ)国土交通省と大阪府に提出した建築費
(ロ)中高一貫校との契約している
安倍 昭恵首相夫人が名誉校長に就任することの効果
これついては,Youtube で昭恵夫人の講演や視察の動画が既に流れています。
鴻池 祥肇参議院議員も同様。
自分も仕事で竣工式に国会議員に来てもらったことはあるが,挨拶は実にうまいです。
「よく言うよ」とさえ思います。
リップサービスに長けていないと駄目なんだろうなぁとその時思った印象があります。
鴻池 祥肇参議院議員の面会記録に近畿財務局に連絡するという記述があっても,「口利きはしていない」と抗弁するワイドショーのコメンテーターもいましたが,文字通りこれが口利きであって,議員本人がするか否かは問題ではありません。
相手方からすれば,議員=秘書であるので同じことです。
それでは,「安倍首相本人」の関与はあるかと言えば,恐らくないでしょう。
しかし,上述の観点から言えば,安部事務所の関与は検証されるべきだと思います。
又,秘書には永田町の議員会館に詰めている秘書もいれば,地元の事務所を守っている秘書もいます。
その意味では,安倍首相の地元秘書まで繋がっている様子はなさそうです。
とするならば,永田町の秘書は関与しているのかということになるが,これは分かりません。
というよりも,政界で長く生きている議員は,そんなに簡単に馬脚を現わしません。
鴻池参議院議員事務所の秘書が真面目すぎるくらい。
何故なら,そんなものは自分のメモに記録するか,頭に刻み込んでおくものだからです。
私は,ある国会議員と永田町の議員会館でお会いした時,その記憶力に感嘆したことがあります。
その方は,国会の最中にも関わらず,休憩時間に面会して頂いた。
秘書に要件のレクチュアを受けると,前回お会いした時点までの進捗状況を速やかに思い出され,その後の進捗状況を私に質問され,現在の問題点を質問されました。
勿論,ご自分のメモを見るわけでもなく,秘書のメモを見るわけでもありません。
これは,「一種の才能だな」と思ったことを記憶しています。
まぁ,結論的に言えば,妙な誤解を招いた安倍 昭恵首相夫人がバカだったということでお終いでしょう。
国有地が格安で払い下げられた経緯
これについてですが,そこに誰かが介在していたからこんなにスムースに,しかも結果的に格安になったのではないかという疑念がもたれていますが,役人は,根拠法令に問題がなければ,一般的に奇異に映ることでも行う習性があります。
私も,30年余り行政と付き合ってきましたが,仕事に関わる根拠法令を熟読し,関連する条文の解釈をぶつければ,向こうも結論を出さざるを得ないし,結果的に彼等は動いてくれるし,若しくは,関係機関へ照会もしてくれます。
役人にとっては,「法的に問題がない(適法)」ということが全てであって,「適正かどうか」という曖昧な観点ではありません。
財務省の理財局長は,「適法である」という答弁で終始しています。
要は,「適法な理屈」をひねり出せるか否かが交渉の手腕といえます。
私は,現役時代,この「適法な理屈」ばかりを考えていた時期があります。
新規事業を計画する場合,必ず関連する法律があり,行政との交渉が必要でした。
そこで,計画段階において,難渋するかも知れない件についての「適法な理屈」を予め練っておきます。
係の担当者も新人の場合(異動したばかり)もあれば,何年も担当している場合もあります。
その方によって,自分の手駒をどこまで出すかを使い分けます。
何故なら,新人の場合は,アドバンテージが既にこちらにあるので,組みやすい。
経験者であれば,相手をどれだけ知っているかがキーポイントとなります。
相手の立場を悪くしないような「適法な理屈」を展開できるか否か。
即ち,係官が上司に報告しやすいような動きをこちらがしてあげるのです。
係官が説明しやすいようにひとひねりした資料を作成します。
この辺は実務を担当しないと感覚として分かりづらいと思いますが,換言すれば,自分の目指すゴールの道筋に相手を如何に乗せられるかどうか。
上部にいけばいくほど,「適法な理屈」を論破できなければ割合簡単に通してくれます(寧ろ通さざるを得ない)。
お互いに根拠法令をどう解釈するかのせめぎ合いです。
私には,相手との交渉は面白かったし,ゲーム感覚で仕事をしていました。
「開校ありき」で進めていたのではないかと批判される向きもあるが,これはちょっと違います。
むしろ,お互いに「開校ありき」で進めるのが当然です。
ただ,開校まで時間がないから,如何にスピードをあげるかが焦点となります。
そこで,「場内処分」等の方法が出てきたのでしょうが,これも「適法な理屈」を持っているように思います。
彼等は,明らかに違法な方法には絶対手を出しません(そんなことをしたら自滅してしまう)。
大阪航空局の処分費用の見積も,彼等が行えない法的な禁止事項がない限り,違法とはなりません。
その算出根拠に基づいて,近畿財務局は契約したにすぎません。
ここで大事なことは,ワイドショーのミスリードに乗せられないことです。
全体像が見えてくると,誰がミスリードしようとしているのかがよく分かります。
保守論客と言われる方々の動画を見てみるといいでしょう。
寧ろ,私には安倍首相と公費(?)を使って飲み食いしている人の方が遙かに汚いとうつります。
福島の時もそうだったのではないですか。
大阪府私立学校審議会の認可
これについても,不認可出来ない「適法な理屈」があれば,異論があろうとも通さざるを得ません。
但し,提出書類に齟齬がない場合に限りますが。
虚偽とも取れる報告
問題はこれです。
ここで,二重帳簿のようなことをしてしまっています。
いくら縦割り行政だからといって,これほど価格が違えば説明がつかないでしょう。
国土交通省の提出書類には「設計見積」,大阪府には「建築見積」を出したとすれば,幾らかの違いはあるが,ここまでひどくはありません。
恐らく,当時はここまでマスコミにたたかれる事態になるとは思っていなかったから,縦割り行政をうまく利用した節はあります。
私だったら,ここは「設計見積」と「建築見積」との差額くらいにとどめておきます。
どの道実績報告するのであるから,国土交通省との最終精算で金額を明確にすればいいのです。
その程度であれば,今回のようなことになっても,「コンサルのミス」などと弁明しなくても十分説明はつきます。
余りにも強欲に走ると,ネタバレした時に逃げ場がありません。
「中高一貫校と契約している」ことについても,嘘はついてはいけない。
実際に相手方の理事と交渉中であれば,それを素直に述べる方が,その時点で契約の締結ができていなくても傷は浅いです。
私は,今回の大騒ぎは,籠池 泰典理事長のダーティさが問題であったということで終わるような気がします(この様な事件の時,議員と官僚は傷ついてはいけないのです)。
ただ,大阪府は最終的に「不認可」と出来るかどうか。
「延期」であれば,紆余曲折があったとはいえ,最終的に作戦は成功したことになります。
不認可とするには,森友学園の経営計画に実行性がないことを判断しなければならないでしょう。
ここに至って,賽は大阪府に投げられました。
不認可となれば,国は粛々と契約解消の手続きをとるだけです。
果たして,大阪府にそこまでの度胸があるだろうか。
人脈という観点からいえば,上記に共通する人脈を辿ってみる方が少しでも核心に近づけるかも知れません。
人脈というのは党派でも何でもないことに注意する必要があります。
それよりも,マスコミは,安倍首相と加計学園との関係に切り込めるか否か。
この第2幕が開くと,世の中はもっと大騒ぎになるでしょう。