これまで面接のことについて色々書いてきましたが,そこにいたるまでの過程を含めて心得ておいた方がよいことをまとめてみました。
社会人としての一般常識ばかりなので,当たり前かと思われるかも知れませんが,私の経験に照らしても,案外おろそかにされていることがあります。
今回はそのようなことも加えて記してみます。
あなたが Web サイトや新聞の折り込みを見た時から始めます。
募集内容
募集内容は以下のとおりとします。
1.身分:正社員
2.職種:一般事務・・・書類作成(請求書など),営業補佐,電話応対,来客対応など
3.資格:年齢45歳まで
4.月給:180,000円~
5.時間:8:30~17:30
6.休日:日曜,祝祭日,隔週土曜,夏期,年末年始
7.待遇:賞与あり,交通費全額支給,各種社会保険完備,有給休暇,退職金制度,制服貸与
8.応募:○月○○日より受付。お気軽にお電話下さい。担当/山本
9.事業所名:日本株式会社 TEL 0222-333-4444
あなたは,日本株式会社に転職したいと考えました(ここでは募集内容については検討しないことにします)。
先ず問い合わせることから始めますね。
問い合わせから就職(採用)までの流れは以下のようになると思います。
1.問い合わせ
2.履歴書作成・送付
3.面接
4.採用
問い合わせ
「お気軽にお電話下さい」と書かれているので,あなたは日本株式会社に電話します。
「もしもし,日本株式会社ですか」
「はい,そうです」
※この時,大抵は受付の方が出ます。担当者が直接出ることはあまりありません。
「求人のことでお電話させて頂いたのですが,担当の山本さんはおられますか」
※ここでは,「さん」を「様」に変えて「山本様」という方がいいです。
「はい少々お待ち下さい」
「山本ですが」
「山本様ですか。XXと申します。○月○○日の新聞の折り込みに貴社の募集が掲載されておりましたので,応募させて頂きたくお電話させて頂いたのですが」
「ありがとうございます。それでは,履歴書に写真を貼り付けて郵送して下さい」
「わかりました。どうぞよろしくお願い致します」
問い合わせのやりとりはこのようなものではないでしょうか。
ここでのポイントは,以下のことがあります。
1.「郵送せよ」ということは,応募者が沢山あることを想定している
2.「電話応対」について
1(郵送せよ)は,応募者が多数に渡る場合があるので履歴書審査が行われる可能性を示唆しています。
従って,正式に連絡があるまでは,「面接」してもらえるかどうかわかりません。
2(電話応対)ですが,多くの人が気づいていないことに,その時から「面接は始まっている」のです。
私も事務職を採用するのに,多くの方の応募があったので履歴書審査をしたことがありました。
審査の時に担当者にたずねるのが,履歴書の内容もさることながら「電話応対の印象」です。
担当者の「言葉遣いもあまりよくない」とか「暗い感じの電話だった」というコメントがあれば,あなたは履歴書審査で不合格になる可能性があります。
たかが電話と思われるでしょうが,そんなところからも判断されるので注意が必要です。
誰も暗い感じの人を採用したいと思いませんし,言葉遣いがよくないのは尚更です。
あなたは何も「根拠がない」と思うでしょうが,「印象」というのはそういうものです。
その印象は,面接させて頂くとあまり外れていないのです。
最後に,「問い合わせ」をするのは早いほうが相手に強い印象を残し,熱心さの表れと取ってもらえる可能性があります。
ですから,「善は急げ」のつもりで電話しましょう。
履歴書作成・送付
履歴書作成については,「履歴書はあなたと一心同体である」にその要点を記しましたので,詳細はそちらを参考して頂くことにして,その他に気づくことを書いてみます。
1.手持ちの写真があった場合はそれを使用するか否か
2.日本株式会社があなたの居住地から近い場合は「持参」するか否か
1(手持ちの写真の利用)は,その写真がどれくらい前に撮られたかによります。
通常は3ヵ月以内のものを使用しますが,中には1年前の写真を貼付された方があり,これでは常識がないと思われてしまいます。
相手はそんなことはわからないだろうと思うかも知れませんが,人の姿は日々変わっていくので,慣れた面接官ならばそんなことは直ぐにわかります。
また,写真の服装は「面接時の服装」とし,それなりの場所で撮りましょう。
自宅でのスマホの自撮り写真は NG と思って下さい。
2(持参の有無)は,「郵送」と言われているのでそれでも問題はないのですが,あなたがこの会社に本当に就職したいと思うならば,下調べを兼ねて「持参」しましょう。
相手も,事前にあなたとお会いできることで,より近い存在と感じます。
また,足を運ぶことであなたの熱意が伝わると思います。
尚,その際は正装とまでは言いませんが,「面接時の服装」をしていくくらいの心構えが必要です。
私の経験でも,持参してくれるのはかまわないのですが,Tシャツにジーパンではかえって印象を悪くします。
郵送・持参にかかわらず,履歴書も問い合わせと同様にレスポンスの良さが勝負です。
関連記事:【面接】履歴書はあなたと一心同体である
面接
無事履歴書審査を通過し面接までこぎ着けました。
担当の方から,面接の日時の連絡が入っていることと思います。
面接場面でのことは,「質疑応答にはどう対処すべきか」を参考にして頂いて,それ以外のポイントを考えてみます。
1.指定時間の何分前くらいに行くべきか
2.面接室への入室・退室の際の礼儀
3.態度(振る舞い)
1(何分前に行くか)ですが,あなたが心の余裕を持ちたいのであれば,30分くらい前に行って,先ず会社の周辺を10分くらい散歩してみましょう。
そうすることで,会社の立地条件もわかりますし,あなたの気持ちも落ち着いてくると思います。
そして,最低20分前には受付を済ませてしまいます。
この時は,どこで待たされるかわかりませんが,玄関のロビーであった場合,受付の方の視線や往来する社員の視線があると思います。
彼らはあなたを値踏みしています。
そこでよい印象を与えられるかどうか。
彼らは「面接官ではない」からと言って無視するような態度を取ってはいけません。
社員とおぼしき人が通られたら「一礼する」くらいの気持ちが欲しいものです。
何故ならば,採用されたならば,あなたは彼らと働くことになるのですから,「礼儀知らず」と思われてしまうような行為は慎んでおくことに越したことはないのです。
2(入室・退室)については,どちらも一礼して「失礼します」の一言を加えられるかどうか。
また,面接室に入って「お座り下さい」と言われた時,「○○です。本日はよろしくお願い致します」と一礼をしてから坐ります。
案外,黙って入室し,何も言わずに席に着き,黙って退室してしまう人が多いのです。
その点では,新規高卒の応募者の方が訓練されているとはいえ,礼儀正しいくらいです。
質疑応答の前に,社会的常識の部分でこけてしまっては,「不採用」にしてしまう面接官もいるくらいです。
3(態度)は,あなたが面接官に与える印象です。
どことなく「元気がない」のは面接官にはすぐに分かります。
気持ちがすくんでしまっている雰囲気を漂わしているのです。
これを何とかするのは難しいかも知れませんが,暗い雰囲気はよくありませんので,空元気でもよいので明るく振る舞うこと。
言葉遣いもはきはきと積極的な姿勢を見せることが大事です。
これも採否の大切な要素ですので,鏡の前で笑顔の練習をやっていもいいでしょう。
服装や髪の色は「服装や髪の色はあなた自身の姿勢の現れ」を参照して下さい。
関連記事:【面接】服装はあなた自身の姿勢の現れ
次に応募者が多い場合は,複数で行う1次面接と,個別に行う2次面接があります。
1次面接
1次面接は,応募者を何名かのグループに分けて行うものです。
一つの質問に対して応募者一人一人が答えます。
この時,まわりに流されない意見(考え)を述べられるかどうかが大切です。
例えば4名で1グループとした場合,あなたが4番目になってしまうと,先の3名とは少しでも異なる意見を述べねばなりませんから苦しいですね。
そのために,面接官は次の質問を逆の方から指名するのです。
そうすることによって端に坐った方のハンディをなくすように配慮します。
グループ面接の場合,声に張りがあり押し出しのきくタイプが有利だと思われるかも知れませんが,問題は応答の内容であって,見かけではありません。
従って,常日頃から自分の考えを述べられるトレーニングを積むくらいの覚悟をしておいた方がいいかも知れません。
1次面接に合格すると,2次面接の案内が来ると思います。
2次面接
2次面接は個別に行いますので,面接官それぞれの質問があなたに集中します。
通り一遍のさわりから入ってくる人もいれば,いきなり核心的な質問をする人もいます。
また,時間はエンドレスになるかも知れないと覚悟しておく方がいいです。
真剣な質疑応答を繰り返していくと,20分や30分はあっという間に過ぎてしまいます。
私が事務職の面接を行ったときは,1日4名以下にとどめて毎日行いました。
午前・午後で各2名の配分をしてもらいました。
ここでも質問について注意しておくことは,あなたがある質問に答えてしまえば,次の質問に移るとは限らないことです。
即ち,あなたの答えに対する質問をされ,どんどん派生していくこともあり得ます。
掘り下げた考え方をたずねられると言ってもいいでしょう。
私の職場では個別面接の時間は決めていませんでしたので,長い方は1時間くらいに及ぶこともありました。
余りに短い場合は,面接官はあなたに興味を失ってしまい,それ以上たずねる気持ちにならない場合か,余程素晴らしいかのどちらかですが,ほとんどが前者です,
従って,余りに早く終わった場合には「不採用」の覚悟をしておいた方がいいでしょう。
長くなる場合は,面接官はあなたという人物に興味があり,職場での職務も想定しながら質問している時もありますので,採用の見込みがあります,
いずれにせよ,あなたの考え方をしっかり鍛えておいた方がいいです。
例えば,北朝鮮がミサイルを発射した件について自分の考えをまとめてみるなど,身近なことでもよいので,常日頃から考える習慣をつけておくことです。
このようなことは,いくらハウツーのサイトを見ても鍛えられるものではありません。
逆に言えば,我々面接官も,そのようなサイトにどんなことが書かれているかを研究することによって対処するのは簡単なことです。
あくまで参考にとどめ,あなた独自の視点や考え方を鍛えておきましょう。
面接官は,その努力が仕事に直結することが分かっているために,あなたの考えを掘り下げてくるのです。
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採用
あなたは,面接の結果,採用されることに決まりました。
出社日などの連絡が入っていると思います。
その時に,担当者がどのようなことをあなたに言われたかは別にして,以下のことは確認しておきましょう。
1.当日持参すべきもの
2.出社時間(勤務開始時間ではない)
3.服装
1(持参すべきもの)については,会社が雇用保険証や年金手帳などに基づき法的に処理するために必要なものがありますので,担当者の方が何も言わなくても確認しておくことが肝要です。
2(出社時間)は,あなたの席は決まっていると思いますが,正式に他の社員に紹介されるまではそこを使えませんから,そのような準備も考えて訊いておく方がいいでしょう。
3(服装)ですが,まさか初日からラフな服装で出社する方はいないと思いますが,朝礼などでみんなに紹介される場合もあるので,きちんとした服装でいくべきです。
私の職場も,新入職員さんについては,担当者が皆に紹介するシステムをとっていましたから,いくら制服がある職場とはいえ,あまりにラフなかっこうでは恥をかいてしまいます。
私は,余りにラフな格好で来られる方が多いので,担当者に服装のことも付け加えるように言ったことがあります。
最後に
以上,問い合わせから採用までの流れの中で,注意すべきところを記してきましたが,特別に難しいことはありません。
ただ,そのようなことに「注意を払えるかどうか」,または,「気づくかどうか」なのです。
面接以前の段階で躓いているようではお話にならないことに注意すべきです。
私は,不採用を繰り返す人は,履歴書の中味よりもこのようなことで失敗しているのではないかと考えています。
というのは,私の職場でも,面接官達は上記のようなことを問題視する場合もあるのです。
「礼儀の知らない人」とは誰も一緒に仕事はしたくありませんし,外部との応対もさせられないとなれば,そもそも採用なんてことはあり得ません。
上記の内容が全てとは思いませんが,ご自分の中で考える余地がおありならば,この一文を書かせて頂いた価値はあると思います。
是非,細心の注意を払って「採用」を手にして下さい。
そして,万が一「不採用」になった場合には,「今後の参考」にとその理由をたずねる度量が欲しいものです。
必ず教えて頂ける保証はありませんが,中には担当者がそれなりの示唆をしてくれる場合があります。
それがあなたの弱いところであれば改善すれば,次の職場では成功の確率が高まるというものです。