ワーママの育休は同僚男性の負担になるのか

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2017.11.3のJ-CAST NEWSに『「ワーママの育休が同僚男性の負担に」 新聞投書欄の訴えに「笑わせるな!」と批判殺到』という記事が出ていました。

朝日新聞(2017年10月31日付朝刊,東京本社版)の「声」欄に掲載された「育休の肩代わり 過重負担では」という投稿が,激しい批判を浴びている。長崎県の40歳主婦の投稿で,夫が娘の小学校入学式のため休暇を申請したが,直前になり同僚の女性が育休を延長してしまった。楽しみにしていた夫は出社を命じられ,式に出るのを諦めた。夫は産休している同僚の仕事を殆ど肩代わりしたため過労が重なり,同じように過労で倒れてしまった人がいる。自分は片手間に育児はできないと考え,正社員だった会社を辞めている。その結果,子供の成長に寄り添う喜びを得た,とし,それぞれの家庭に事情はあるのだろうが、

「産休や育休の肩代わりが同僚男性らの負担になっている現状に気づいてほしい」

と結んだ。

出典:J-CAST NEWS

色々なご意見が飛び交っているようですが,わたしなりの見解を述べてみたいと思います。

この投書は,ご主人が娘さんの小学校入学式に出席するのに「休暇」を申請したが,直前になり同僚の女性が育休を延長したために,ご主人は出社を命じられ,式への出席を諦めざるを得なかった。
「産休や育休の取得」が同僚男性の負担になっている現状に気づいて欲しい。

まとめると,上述のような内容だと思います。
ここでは,「感情的な非難」ではなく,法的なところから考えてみたい。

結論から言いますと,どちらも法的な権利を有しているとすれば,その対処は会社側が行わなければならないことであって,同僚を非難するのは筋違いだということです。

ご主人は恐らく「有給休暇」を会社に申請したものと思われますが,労働基準法では,会社側はこの休暇を「取り消す」ことは出来ません。
会社に認められているのは,「時季変更権の行使」といって,その日は繁忙であるから異なる日に取得させることです。

労働基準法第三十九条(年次有給休暇)
○5 使用者は,前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし,請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては,他の時季にこれを与えることができる。

参照:労働基準法

しかし,会社の事情といっても色々ありますから,時季変更権を簡単に行使できるかどうかは難しいところではないでしょうか。
私の経験でも,それを行使したことはありません。

問題は,休暇が別の日に与えられ,ご主人がそれを承諾すれば,理由はともあれ合法となります。
それを育休を延長した同僚の問題にするのは道理が違います。

また,「直前に」と表現されているようですが,延長の申請期限がその時期と交叉しているならば,女性が行った延長申請はなんら問題はありません。
「産休や育休の取得」は,育児・介護休業法により,法的に認められている権利ですから,まわりの同僚が仕事の肩代わりをしなければならない,という問題は会社の内部事情であって,これを拒むことは出来ません。

私の在籍していた職場は圧倒的に女性が多く,産休・育休,育児短時間労働は当たり前で,それに対処するのが上司の役割であり,事業主の義務なのです。

モンスターな人もいるといわれていますが,当たり前のように取得するのですから,保育所の待機児童の問題と相まって,この10月から法律が改正されていますので,会社としてはますますその対応をしておくことが必定になっています。

従って,同僚に負担がかかって過重労働になっているとすれば,その解消は会社側に要求すべきことであり,権利を行使する同僚に矛先をむけるのは,お互いに自滅の道を歩むようなものです。

また,投書されたご本人は会社を辞められているようですが,この行為は他の同僚に仕事の負担を及ぼすことはないのでしょうか。
私の経験からすれば,育児短時間勤務であっても,辞めてしまわれるよりはまわりの同僚にかかる負担は少なくなります。

自分の事情を受け入れられないからといって,相手の行為を非難していても問題の解決にはならず,先ず何よりも,会社側が労働環境の改善の取り組みをするように求めるべきでしょう。

上司は,どのような観点から出社を命じたのかは不明ですが,これも法的に問題があるとすれば,休暇申請を取り下げる必要はなかったと思われます。

厳しい言い方をすれば,小学校入学式への出席は「一生に一回」かも知れませんが,仕事で飯を食っている以上,出席できなくてもしなければならない仕事があるとすれば,それを優先するのは当然のことです。

しかし,その一日を大切にして,本人が出席可能にしてあげられるかどうかは,上司やまわりの同僚にそのような配慮があるかどうかだと思います。
極端な言い方をすれば,たった一日くらい何とかなるのですから。

このようにお互いの権利がぶつかり合う場合,事業主や上司はどのような采配をふるうのかはよく考えなければならないでしょう。
私の職場では,産休・育休は当然のこととしても,その復帰が容易なように託児所を接地し,可能な限り通常勤務できるような環境を整備してきました。
会社にはそのような不断の努力をする義務があるのですから,先ずは,その問題から討議すべきではないかと思います。

参照:育児・介護休業法のあらまし(厚生労働省)

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