ストレスチェックはお済みでしょうか

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労働安全衛生法が改正されて平成26年12月1日から施行されました。
その概要は,厚労省の資料によると以下のようになっています。

本制度の目的

1.一次予防を主な目的とする(労働者のメンタルヘルス不調の未然防止)。
2.労働者自身のストレスへの気づきを促す。
3.ストレスの原因となる職場環境の改善につなげる。

具体的内容

1.常時使用する労働者に対して,医師,保健師等による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)の実施を事業者に義務付け(労働者50人未満の事業場については当分の間努力義務)。
2.検査の結果,一定の要件に該当する労働者から申出があった場合,医師による面接指導を実施することを事業者の義務とする。また,申出を理由とする不利益な取扱いは禁止。
3.面接指導の結果に基づき,医師の意見を聴き,必要に応じ就業上の措置を講じることが事業者の義務となる。

これは毎年1回行われることになっており,その対象者は,「常時使用する労働者」とあり,その定義は以下のようです。

常時使用する労働者の定義

1.期間の定めのない労働契約により使用される者(契約期間が1年以上の者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。
2.週労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。

正規職員,契約職員(勤続1年以上及び更新により1年以上勤務予定者),非正規職員で週の労働時間が4分の3以上である者が受検が必須となります。
又,一定の要件に該当する場合で,自ら申し出た時は医師による面接が行われます。
面接の結果,就業上の措置を講ずることが事業者の義務となります。

チェック項目は,表1のようなもので,各項目に対し4段階で回答します。
その結果を集計し,「一定の要件に該当する者(高ストレス者)」か否かを判断して,医師の面接指導の要否を決めます。
表1

これは,労働者のメンタルヘルスの一助として創設されたようですが,質問票を見る限り,恣意的に回答すれば,「問題なし」若しくは「高ストレス者」にも簡単になり得ます。
受検者がどこまで正直に回答する気持ちがあるかどうかが課題となるでしょう。

そして,事業所に医師の面接を申し出た場合,不利益を禁止されているが,そのはどこまで担保されるのか。
労働者側からいえば,正直に回答して不利益を被ってしまえば,踏んだり蹴ったりであり,万一退職に追い込まれることがあるとすれば,有害無益なものとなります。

精神的健康は,極めて難しい概念であり,身体疾患のX線検査や血液検査の結果のように視覚的でないため,本人の自覚が必ずしも他者に理解できるとは限らないし,余程の専門医でない限り診断は一層困難を極める。その辺のところを理解し,事業所が配慮してくれるかどうかも問題でしょう。

厚労省のウェブサイトに,ストレスセルフチェック(末尾の参考2)があったので試してみた結果が Fig2である。一度試されてはいかがだろうか。
Fig2

新しい制度だけに事業所側の慎重な運用が望まれる。
決して労働者への圧力となるような利用は厳に慎むべきであろう。
そして,受検者もその結果をもって,自分の精神状態を固定的なものと考えず,あくまで「今の状態」という限定的な理解をするべきです。

私も,40 代初めの頃,張りつめていた糸がぷっつり切れたような状態となり,精神科医師から「抑鬱状態」と診断され,1ヵ月休職したことがあります。
大型のプロジェクトを任され,2年間従事し,その多忙な真っ最中に母を肺がんで亡くした。
一人っ子であった私の唯一の肉親である母の闘病生活に付き添うことも出来ず,死に目にも会えなかった。
プロジェクトを全う出来たものの,自分には母への悔恨が潜在的にあったのでしょう。
一段落したと思った矢先に上記のような状態になってしまいました。

自宅療養しながら,職場との接触を図るのも嫌で,電話にも出なかった。
自分はもう駄目かも知れないとさえ思いました。
しかし,その疲れが癒されてくるにつれ,少しずつエネルギーが戻ってくるのを感じ,3週間目に一人で旅に出かけました。
道中,私の目に飛び込んでくる風景はとても眩しく,自分が穴蔵から外界へ出てきた感覚を思わせました。

その風景を眺めながら,自分はもう充分立ち止まった。又,歩き出そうと決心しました。
それは,同時に母が背中を押してくれた瞬間でもあったかも知れないと思っています。
医師は,薬を処方してくれたが一切服用しませんでした。

それは自分の問題であり,薬を服用することによって治すものではないと思ったからです。
それ以来,私は一度もその様な状態になったことはありません。
だから,今の結果に捕らわれず,立ち止まることはあっても,再び歩き出すことを可能性として持ち続けて欲しいと思います。

検査がどの様な結果であろうとも,それは現在の心理的状況に過ぎないと限局的に考えることこそ,苦境を乗り越えていける唯一の手段ではないかと思います。

(参考)
1.厚労省:改正労働安全衛生法のポイント(ストレスチェック制度関連)
2.厚労省:5分でできる職場のストレスセルフチェック
3.厚労省:実施マニュアル(PDF)
4.厚労省:ストレスチェック制度導入ガイド(PDF)

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