施錠確認の怠慢は死を招きます

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法人が初めて介護施設を開設した時の約27年前の話です。
当時は,認知症を専門的に処遇する施設は少なく,職員も試行錯誤の連続でした。
そんな時事件は発生しました。

夜中の2時に自宅の電話が鳴り響いたので,寝ぼけ眼で受話器をとると,聞こえてきたのはケースワーカーの切迫した口調でした。
分かったことは,「入所者の方がベランダから飛び降りて骨折した」ということ。
来てほしいというので,慌てて家を飛び出しました。

30分後施設に着くと,所属長も出てきており,本人は救急車で近くの公立病院へ搬送したとのことでした。
打撲はあるが,足を骨折している模様で当直者の介護職員が付き添っているとのこと。

こちらは,ベランダから飛び降りることなんてあり得るとは思いませんから,訳が分かりません。

話を聞いていくと,その方は足の達者な男性の入所者で,日頃から家に帰りたがっていたらしい。
日中も,非常出口の取っ手をガチャガチャやって,職員さんから注意を受けていたようです。
2階の自分の療養室の窓からベランダへ出て,そこから飛び降りた。

何故,窓が開いたのか。

その日は,爽やかな晴れの日で,日中しばらく窓を開けて換気をしたとのこと。
窓は二重ロックになっており,フックを落とせば鍵がない限り解除はできず,入所者の方が開けられる筈がありません。
ということは,窓は閉めましたが,フックを落としていなかったことになります。

日勤の職員さんは,勤務終了前に担当の部屋の確認を行うことになっています。
担当の職員さんは,入所者の方の確認をしただけで,窓の施錠を確認しなかったのでしょう。

ところが入所者の方が窓から出ようとしてカギを開けようとしたら開いてしまった。

職員さんは2名で夜勤を行っており,毎時各部屋の状況を確認しに行きますが,よもや外に飛び出すとは思いませんから,窓などは点検しないでしょう。
日勤帯の職員さんも目視をしただけで,カギを触って施錠確認しなかった。

普通は同僚のやったことを誰も疑いませんから,夜勤帯の職員さんは確認はしません。
そこに盲点があり,日勤帯の職員さんも施錠を確認しなかったことも盲点となってしまった。

幸い入所者の方は,大腿骨の単純骨折だったのでよかったのですが,家族説明をどうしようかということになり,飛び降りたのは事実であるからありのままを伝えることにしました。
勿論,事故ですから,入院費はどうなるのかと問われることも考え,先ずはご負担願えないかと申し上げて,拒否された場合は法人が負担することを決めました。

夜中にお電話することはできませんから,朝早くにケースワーカーが電話を入れることになりました。
事実を説明するといっても,「どのように話すのか」。

当然ご家族の方はお怒りになるだろうし,入院費や付き添いも施設負担でしてくれと言われる可能性もある。
施設にも責任はあるが,認知症故の行動であるから,不可抗力の要素が強いという趣旨をどう納得してもらうか。

色々言い回しを考えましたが,結局はありのままを伝え,ご家族の反応を見ようということになりました。
幸い,渋々ながら了解していただき,退院後はそのまま入所して頂く手配をすることにしました。

現在は,どの施設にも認知症の入所者の方はおられると思います。
今回の事故は,骨折だけでよかったものの,死亡事故になっていたらどうなったかと思うと,今でも冷や汗が出ます。

このような事故を防ぐためにも,「施錠確認」は確実に行うように心がけましょう。

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